「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きる資格が無い」とは、ハードボイルドの代名詞であるマーロウのセリフですが、そういうお話なのかなと。キャシャーン sins 15話 「死神ドゥーン」 の感想です。
キャシャーンは、これまであまりハードボイルドではありませんでした。ハードボイルドとは『やせ我慢』なんですよね。強大な敵に立ち向かい、恐怖で押しつぶされそうになるところを、あくまでニヒルなセリフを決める。酷い状況に置かれてもクールな態度は崩さない、というのがハードボイルドです。
一方で、キャシャーンは弱い心を隠そうとはしていませんでした。自分の出自を悲しんだり、過去の過ちを嘆いたり。彼はやせ我慢する必要は無かったですから。
でも今や、彼には守るものができました。だから(精神的に)強くならなければならないし、優しくなければならない。つまりやせ我慢してハードボイルドに生きることが必要になったのでしょう。
かつての日本には、ハードボイルドが美学としてありました。明治の人などは典型的です。でも昨今は流行らないですよね。やせ我慢せず、心のままに素直に生きればいいじゃないという風潮で。でもそうやって状況に流されて、その瞬間のメンタルに支配されることは、むしろ防御力を下げているのではと思えます。やせ我慢でもいいから、1本筋の通った自分のスタイルを決めたほうが、精神的にタフになれるのでは。明治の人のハードボイルドは難しい時代を生き抜くための知恵であり、今こそ必要なのかもしれない、などとやくたいもないことを、この作品を見ながら考えていました。キャシャーンも強くなれるといいのですが。
死神ドゥーンのシーンと、リンゴのシーンを交互に描いて、「優しさとは何か」を表現した構成は良かったですね。リンゴが弱っているようなのが気がかりです。
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