この物語は、箱に憑かれた箱マニアの話なのでしょうけれど、箱の何がそうさせるのでしょうか。魍魎の匣 第8話 「言霊の事」 の感想です。
箱は本来、中に何かを入れるためのものですが、箱自体が目的になることもあるのでしょう。キリスト教(とユダヤ教)のアイテムである聖櫃(アーク)は、本来は『モーゼの十戒』の石版が収められた箱を言うそうですが、そのうちに聖体を入れる箱になったり、キリスト聖遺物が入っているという伝説が生まれたり、中身はいろいろみたいです。箱そのものが重要なんでしょう。箱には「中に何か宝物が入っている」というロマンがあるのでしょう。
東京通信工業の『デンスケ』というアイテムが登場しました。東通工はソニーの旧社名で、デンスケはソニーのテープレコーダの商標ですね。イッツアソニー。関口はその音を聞いて、「箱の中に魔物がいる。科学という名のオカルトだ」と畏れていました。箱には、中に何か見てはならないモノ、白日に晒してはならないモノが納められている、という畏怖を駆り立てるものがあるのでしょう。一方で『パンドラの箱』の話のように、開けてはいけない箱を開けてみたい、という欲求もあるわけです。
高級なアイテムには豪華な箱が付いていたりしますよね。腕時計とかアクセサリーとか。『DVDボックス』なんていうのもありますが、人は大切なものを箱に仕舞いたいという心理があるのでしょう。箱に入れること自体が嬉しいという。
アバンの劇中劇シーンで、主人公(関口)が箱で隙間を埋めて喜んでいましたが、箱にはそういう「空間を最適な形と大きさで占有する」という働きもあるのでしょう。家具もそういうところありますよね。家具も一種の箱なので、本来は中に入れるものによって大きさを決めるべきですが、どちらかといえば部屋に収まるように家具を決めたり(あるいは特注したり)します。これも、中身よりは箱自体が目的になっているパターンでしょう。
と、私の想像する『箱マニアの萌えポイント』を並べてみたのですが、この物語の箱マニア(犯人?)の属性は絞れていません。いろいろ複合なのでしょうか。でもこういうことを考えながら観るのも面白いと思います。
ところで、これは本格推理物なのでしょうか? 本格推理とは、事件の手がかりをフェアに読者にさらして、探偵と同じ立場で推理できるというものです。京極堂は安楽椅子探偵なので、彼が見聞きすることは公開されていて、その点は本格物っぽくはあります。でも、道場の図面を見て一人で納得していたりとか、彼しか知らない知識もあるようなので、やはり本格物とは言えないのでしょうね。いろんな人が集めてきた手がかりと、京極堂の知識やウンチクによって事件が解決される、というスタイルなのでしょう。
このアニメは野郎ばかり出てくるので、数少ない女性である寄子のシーンが映えます。作画もここぞと力が入っているようで、細かな表情の変化などとても良い。ここで殺されてしまったら残念ですが、そうはならないですよね? 僕は加菜子も生きていると思っているので、二人の再会をぜひ見たいのです。
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ネタバレにならない範囲で言いますと
京極堂と作者の、事件の構造や動機などを説明する論理の緻密さは、論理性重視の側面では本格ミステリー。
ただし、「手がかりは全て公開されていて、それを元に読者が全て推理可能」という意味での本格ミステリーではありません。とはいえ、極端な反則技や非現実的要素(某作品みたいな、都合の良すぎる病気や薬や特殊部隊、異能力者や神様が、事件のメインに大きく関わる、というようなこと)はないです。
榎木津の超能力だけは例外的に本物ですが、事件の本筋には関係ないですし。
情報がそろってきて、いよいよミステリーという気分が盛り上がってきました。ここからが真骨頂なのでしょうね。