会戦そのものはあっけなかったですが、テュランジアの無能さとタイタニアの有能さを、鮮明に描きたかったということでしょう。タイタニア 第6話 「シラクサ星域会戦」 の感想です。
タイタニアに反旗を翻したからには、当然、周辺国との根回しも完了していて、反タイタニアの一斉蜂起をする準備が出来ていると思っていたのですが、そうではありませんでした。タイタニアの強硬姿勢に焦って、慌てて周辺国の協力をとりつけに走る始末。ちょっと考えられないような無能ぶりですが、『組織』ではこういうことはありえます。
ありえないような愚かな決定を、優秀な人がいるはずの『組織』が行ってしまうことはよくあるものです。日本政府や役所を見ていればわかりますし、会社や学校でも、組織が大きくなるとありがちなはず。『組織』というものはうまく運営しないと、とめどなくダメになり得るのです。
テュランジアの様子を見ると、三人のリーダー格がいて、特に誰がトップというのは無さそうです。これだけでもダメっぽい組織ですね。あの三人の背後にはぞれぞれの派閥があって、その間の根回しとか調整とか妥協とか紆余曲折を経て、意思決定が為されるのでしょう。そうして決まったものは、当初の目的を見失った意味不明なものになりがちで、しかも誰も責任を取らないということになります。老化して動脈硬化した組織です。
一方でタイタニア側は、アジュマーン藩王を頂点にしたシンプルで効率のよい組織のようです。4公爵は競い合って切磋琢磨していますが、、少なくともアリアバートとジュスランの間には横の連携がしっかりあり、アイデアを授けたりそれを受け入れたりする柔軟性もあります。実にステキ組織です。タイタニアにも長い歴史があるのに、こんな若々しい組織でいられるのは奇跡的と思えますが、厳しい実力主義の専制国家だから、というのはあるのでしょう。
しかし戦闘になると、些細なことでも戦況はひっくり返ります。テュランジア側にも一瞬だけチャンスがありました。ワイゲルト砲は威力絶大でしたが、アリアバート艦隊はその運用に不慣れだったのか、斉射後に陣形の乱れがあったようです。ワイズ中佐はそれを目ざとく見つけました。「最も大きな危険は勝利の瞬間にある」とナポレオンも言いましたが、『攻撃の限界点』を狙って反撃するのはセオリーです。
しかしテュランジア首脳部は、ワイゲルト砲の被害にパニックに陥っており、ワイズ中佐の進言を受け入れることはできませんでした。クラウゼヴィッツは「戦場は常に混乱しており、より混乱が少ないほうが勝つ」と言いました。アリアバート側も混乱していたが、テュランジア側のほうがさらに混乱していたということですね。
『暴虐な支配者 対 反乱勢力』という図式だけ見ると、支配者側が旧弊な体制で、反乱勢力が清新な組織、という印象を持ちますが、今回の話は、そんな単純な図式では無いことを示したいのでしょう。タイタニアのおかげでダメ組織が一掃されたとも言えます。でもそれが道義的に良いことなのかは別問題であり、この図式は銀河英雄伝説とも共通していますね。
ファン・ヒューリック君は今のところ、これといった信念の無い人のように見えるので、『民主主義の守護者』たる信念の塊だったヤン・ウェンリーのようには振舞わないでしょう。彼がどのように歴史に関わるのか楽しみです。
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