終末の世界が美しい、というのは分かる気がします。グランドキャニオンで崖の端に立った時に感じたのですが、人工物が一切見えない荒涼とした世界は凄絶に美しいかったので。キャシャーン sins 7話 「高い塔の女」 の感想です。
例え話として引き合いに出すのは不謹慎かもしれないのですが、僕が好きな作家である栗本薫さんは、いまガンで闘病されています。すい臓がんは生存率の低いガンで、今は抗ガン剤が効いて小康状態のようですが、1年後に生きている保証は全く無いわけです。でも栗本さんは、「残り時間が何年だろうが何ヶ月だろうが、自分は小説を書くだけだから、何もジタバタすることは無い」と言われています。残り時間にやることが、迷わずあるって凄いですよね。僕だったら、何をしたらいいのか分からなくてジタバタするでしょう。
この物語は、終末の世界でジタバタする人々の話です。今回のヒロインは塔を建てていますが、英語で"The Tower"と言えばバベルの塔であり、傲慢や徒労の象徴です。彼女も徒労なのかもしれないと思いつつ、他にやることが無いので、憑かれたように塔とそれに納める鐘を作っているのでしょう。
彼女が作った鐘は、品質的には不本意なものだったようですが、キャシャーンの心には届きました。それで彼女は満足を得られたようです。栗本さんにしても、「小説さえ書いていればいい」と言い切れるのは、小説が読者に届いて、それによって彼女が読者の中で生き続るからでしょう。塔を作った彼女は、キャシャーンという受け手を得たことで、自分が滅びてもキャシャーンの中で生き続ける、と感じることができたのでしょう。
キャシャーンの役割は、結局そういうことなのかもしれません。終末の世界を巡って、人々の最後を看取ること、です。
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