からまった謎を一気にほどいて、かつノンストップの疾走感でまとめきったという、素晴らしい最終回でした。なかなかこれはできませんよ。『マクロスFRONTIER』 (フロンティア) 第25話 「アナタノオト」 の感想と総評です。
『バジュラとは何か』の謎ですが、プロトカルチャーの作った生物兵器というわけではなく、むしろプロトカルチャーが神格化して自らを模した?ほどの超生物のようです。
バジュラが歌に反応するのは、歌+フォールド波が、彼らの会話(あるいは歌そのもの)に似ているからなのでしょうね。ここはまぁ、直球な設定と言えます。でも想像ですが、プロトカルチャーが『自らを模した』ということなので、バジュラの歌がまずあって、それを模したものがプロトカルチャー、およびその末裔である人類の歌なのかもしれません。このあたりはまだ謎です。
謎と言えば、クイーンとは何か、もいまいちはっきりしませんでした。ランカはクイーンだったようですが、なぜ人類(とゼントランの混血)であるランカがバジュラのクイーンになる資格があるのか。これらの残った謎は、きっと今後のマクロスシリーズで語られることになるのでしょう。
グレイスはクイーンのプロトコルをハックしてクイーンになることに、一旦は成功しましたが、ランカとシェリルのダブルアタックに敗れ去りました。バジュラがシェリルの存在に気づいたことで、人間に対する考え方をあらため、そのことでグレイスの築いたネットワークにほころびが生じたのでしょうか。プロトコルが変化してハックしきれなくなったとか。映像からは、そのあたりはわかりませんでしたが、まぁそんな感じなんだろうなと思っています。
それにしても、レオンは何がやりたかったのだろう。巨大ランカの正体がバトルギャラクシーであることは知っていたっぽいので、あの時点でもグレイスと結託していたということでしょうか。いまいちピンと来ませんでしたが、なにか見落としたかもしれません。
ランカのおなかが光る描写が謎でしたが、あれはバジュラの腸内細菌だったと。G型感染症の患者は細菌が脳に定着するので死の病になるけれど、ランカはバジュラ同様に細菌を腸内で飼っているので、G型感染症の病状は出なかったわけです。ランカの手助けによって、シェリルの脳にいた細菌が腸に移動することで、シェリルは復活を果たしたのでした。これでランカとシェリルは同格ということですね。
アルトが二股を解消しないエンディングは意外でしたが、これはこれで爽やかでいいのでは。まだ3人とも、子供と言っていい歳だしね。「続きは劇場版で」だとしてもそれほど不快感は無いかな。このシリーズできっちり結末を付けてくれたので、むしろ続きがあるのは楽しみです。
戦闘シーンは7話が最高だと思っていましたが、超えましたね。個人的にはケーニッヒモンスターがいいところで活躍したのが嬉しくてたまりません。これはプラモデル化フラグか!
最終回なので総評をやります。
ストーリー: 5点
中だるみはありました。特に終盤の鬱展開は辛かったですが、序盤はワクワクさせられたし、最終回もとても良かったので、満点でいいと思います。バジュラの謎がすべて解消されたわけではないのはちょっと残念ですが、そもそもマクロスは壮大なシリーズ物なので、これは仕方ないでしょう。
キャラクター性: 4点
いいキャラなんですが、もうちょっと何かあってもいいかな、とは思ってしまいます。特に、アルトの役者設定があまり生かされていないのが残念。
画: 4点
戦闘シーンは文句なしというか伝説的ですが、キャラの絵が相当にひどく崩れている回があったので減点せざるを得ないでしょう。。DVD/BDでは修正されるでしょうか。
演出: 5点
戦闘とライブとの同期する演出は素晴らしいですね。特に7話と最終回は何度も舐めるように見たいです。キャラクタの心理を描くシーンでも、印象的な演出がちらほらありました。
音楽: 5点
管野よう子さんの曲は大好きというほどではないのですが、映像とマッチした曲は素晴らしいです。
総合的な評価: 5点
傑作と言っていいと思います。ドラマも映像も素晴らしかった。キャラクタ性にやや物足りなさはありましたが、続編(劇場版?)で解消してくれることを期待しています。
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ヴァジュラについては、あの流れを見る限りフォールド技術はプロトカルチャーの母星に落ちてきたヴァジュラを研究して得たものみたいに見えますね。だから、神格化された。向こうはそんなこと知らないのでしょうが。
ランカがクイーンであることについては仮説は立てられます。どうみても、女王を中心とした社会性昆虫の形態を取っていますから、雌性体が雄性体の上位者である。ランカは人類で繁殖を行える女性の共生体だからクイーンなのでしょう。ただし、群の母とはなれないからリトルがつくと。人類はそんなにたくさん産めませんからね。シェリルが治ったのはランカの共生形態をシェリルの体内のヴァジュラが反映して形態を変化させたということでしょうね。次世代の共生体を生み出せるクイーンを出来るだけヴァジュラも得たいでしょうから。既にリンクできるシェリルをランカ以外のクイーンとして生かすことがヴァジュラ全体の利益となるから治った。ただ、問題は男性の感染者がどうなったかですよね。彼らも共生形態に変化していればいいのですが。
レオンについては謎です。案外何も考えてなかったのではないか? とも思えますし。フロンティア軍使い潰せば何とかなるだろう位にしか考えていなかったのではないかと。ヴィルラーは銀河規模の群体知性であるヴァジュラならミンメイが乗っていたメガロードの行方を知っている可能性が高い。せめて彼女の消息をって所ではないかと。
銀河規模のミンメイの追っかけかもしれない。そうすると凄いロマン爺ですな。
グレイスについて言うなら、彼女は生命というものを舐めすぎていた。これに尽きるでしょう。自我がある行為を行ったと思うのは行為を行った十秒後という事が脳科学で解っています。私とは脳の中の意識ではなく、肉体そのものだと。自我とは肉体が集めるあまりに膨大な情報に対する反応を要約記憶するシステムであると結論づけています。グレイスは本来肉体から切り離せない自我だけをインプラントで抜き出してつないでそれで進化の究極だと言っている辺り間抜けです。肉体から遊離すればただの反応記録プログラムと同レベルになるのにそれをやってしまった。肉体があった頃の妄執を記憶してそれに基づき動くAI。グレイスはそういうモノに成り果てていたのではないか? 彼女の協力者達もおそらく同じでしょう。だからそうではないアルト達に破れた。機械仕掛けの亡霊達による命ある者達の世界への侵略。あ、なんかこれってマクロスプラスと通じる所がありますね。
映画版でもOVAでもいいですが、シェリルとランカが藤娘やるアルトみて、あまりの艶っぽさにランカとシェリルが女なのにアルトの女装に負けたとへこむ。ただ、そこでシェリルは終わらない。アルトの藤娘を元に自分より艶っぽい女性を演じられる想い人に対する歌を書いてランカとデュエットで大ヒット。(ランカは話持ちかけられたら即OKでしょうね。「アルトくん、女の子は怒ると怖いんだよ! 男の子なのにあんなに色っぽいなんて! 反則だよ! 」と女の尊厳を冒された事への怒りのオーラを漂わせながら嬉嬉として歌うかもしれませんが)「気になるあいつはMr ビューティー」なんてタイトルだったりして。でその大ヒットのせいで、アルトがてんやわんやとかそういうのをみたいですね。
総括してみると今期一番のアニメです。
ランカはバジュラというよりは、腸内細菌のクイーンなのでしょうか。バジュラの脳は細菌ですものね。だとするとランカが”リトル”なクイーンというのはアリなのかもしれません。
ヴィルラーはミンメイを探すために銀河ネットワークが欲しかったのか。なるほどそうかもしれません。ミンメイは行方不明なんでしたっけ。
グレイスは、バジュラ(および細菌)を機械のようなものだと思っていたのが敗因なのでしょうね。思考形態は人類とは違うけれど、立派な生命であって、生命とは変化するものですから、コントロールしきれなくて当然なのでしょう。
ラブコメOVAは僕も見たいです。シェリルのパンツ騒動とか面白かったので、ああいうノリでアルトの女装ネタをやるのは面白そう。というか本編であっても良かったですね。