メルクマール

どうもこの作品は、旅の過程を描くいわゆるロードムービーで、しかもその先々で出会った女性と恋をするという、寅さんのような作品みたいですね。 主人公が『遊び人』という点も、似ているかもしれません（違うか）。

このタイプのストーリーは、女性と別れるときに切なさを演出できる良さがあります。 でも、1話の中でヒロイン（寅さん風に言えばマドンナ）に思い入れを持たせ、ストーリーに起伏をつけつつ完結する必要があるので、脚本をまとめる難易度はとても高いと思えます。 今のところ、それをとてもうまくやっていると言えるでしょう。

これまで登場したヒロイン、もといマドンナは、今回のリズベットも、また3話のサチや4話のシリカもそうでしたが、SAOという仮想世界の中にいるからこそ、確かな人との繋がりを求めていました。 完全な仮想現実でも、完全な現実でもないあやふやな世界だからこそでしょう。

この世界での死が現実の死であるということは、SAOは限りなく現実に近いのですが、でも殺人ギルドの誰かが言っていたように、それが証明されたわけでは無いのですよね。 ゲームマスターがそう言っただけで。 死んだ人はゲームに戻ってこないので、いわば『死後の世界』のことは誰も知らないのです。

なのでこの世界は、「ここが現実なので、ここで真摯に生きていくしかない」という雰囲気と、「どうせゲームなんだから何をやってもいいのでは」という雰囲気が、どっち付かずであるのではないでしょうか。 人によって違うし、一人の人間の中にも両方の感情があって、触れ幅があるでしょう。 自分がどう生きてよいのか確かな指針が無いし、他人もどう考えてるのかわからないので、「どうせゲーム」と考えている人間と、まじめに生きている人間が接するのは難しいでしょう。 なかなか困難な世界です。 「確かな繋がりが無い」と不安を抱くのも無理はありません。

そんな中でキリトは、あくまで真摯に生きています。 他人を見殺しにすることを畏れていて、殺人ギルドを憎んでいて、だからこそ必死に強くなったのでしょう。 彼のブレない生き方が、不安を抱くマドンナたちに、安心感と憧れを抱かせるのだと思われます。

まぁ、キリトがナチュラルに女たらしだというのもありますが。 彼の「何があっても君を守る」的な殺し文句は、強くてイケメンだから効果的です。 でもそれほどイケメンでなくても、現実世界でも、女性は本質的にこういう言葉に弱いので、キザでもたまに使ってみるのもいいかもしれませんよ＞諸兄

「あなたの専属スミスになりたい」というのは、古風に言えば「あなたの朝ごはんを毎日作ってあげたい」的な、口説き文句なのでしょう。 ラブコメにありがちの鈍感主人公は、こんなとき「それはありがたいな」と意図に気づかないものなのですが、キリトはちゃんと雰囲気を読んで、その後のフォローもしています。 ハーレムラブコメではなく、しっかりラブストーリーをやっていると言えるでしょう。

気持ちを入れたら良い武器が出来た、ということのようなのですが、これも気になるディティールですね。 単なるパラメーターや乱数ではない、アクセルワールドでの『心意』的な、意思がゲームに影響する要素があるのかもしれません。

しかし、シリカやリズは行きずりで終わるには惜しいキャラですし、公式サイトのキャラ一覧にもあるので、たぶん再登場するのでしょう。 再会が待ちきれない思いです。

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