ミリタリーだけではなく歴史的背景も興味深い。 トータル・イクリプス 第4話 『朧月の群れ』 のレビューです。
3話のレビューを書けなかったのですが、2話までの最前線での攻防とはガラッと変わって、後方の基地での兵器開発がテーマになっています。 地味そうですが、やり方次第では盛り上がるでしょうね。 『マクロスプラス』では、次世代可変戦闘機の候補が2機種あり、それの競争試作をしているという設定でした。 この作品が作られた頃、まさにアメリカの次世代戦闘機の競争試作が行われていたので(その結果、F-22ラプターが採用されましたが)、ミリタリーファンにとって燃える設定だし、ストーリーも盛り上がりました。 この作品はどうでしょうか。
主人公のユウヤは、エリートパイロットの類型的な性格で、優秀なことを鼻にかけていて反抗的な、扱いにくい奴です。 彼がまずその性格を改めるか、あるいは発展的に良い方向に向くことが必要で、そのための荒療治として、扱いにくい機体をあてがったと考えられます。 まず、そのプライドをへし折るためで、唯依が「貴様は未熟だ」とかやたら貶めているのも、そのためでしょう。
日本製の機体は、設計思想がピーキーすぎて扱いにくいというのは、らしい設定でいいですね。 変態設計は日本のお家芸です。 零戦は操縦が難しいわけではないですが、防御力を犠牲にして極限まで軽く作り、エンジン出力のわりに翼は大き目にして、防御力や速度で劣るのを旋回性能でカバーしろという思想でした。 後ろに目が付いているような、スキルの高いパイロット向けに特化した仕様ですね。
自衛隊のF-2戦闘機(バイパーゼロ)は、アメリカのF-16をベースに日本で魔改造したものですが、大きな対艦ミサイルを4発も積めるのが特徴で、そんな無茶な機体は他に例がありません。 ロシアや中国の上陸部隊がワラワラと船でやってきた時、それを限られた機体で撃退する必要があるからですね。 日本の特殊な事情に合わせたために、一般的にはアンバランスな機体になっています。
ユウヤが手こずっている『吹雪』も、実戦経験を元に、理由があってピーキーな性格になっているのでしょう。 これを乗りこなしたとき、彼はパイロットとしても成長できそうです。
ユウヤの日本に対する個人的な確執も、気になるところです。 第二時大戦中、アメリカの日系人は強制収容所に入れられたりして、ずいぶん差別されたそうですが、この世界は戦後の歴史が我々の世界と違うので、まだそういう差別を引きずっているのかもしれません。
第二次大戦中、米軍には第442連隊という日系アメリカ人兵だけで編成された部隊がありました。 勇戦で名を轟かせていて、アメリカ合衆国史上、もっとも多くの勲章を受けた部隊だそうです。 勲章が多かったのは、何度も激戦地に送られて、大量の戦死傷者が出たからでもあります。 彼らが日本の敵側に回ってまでも、そこまで頑張ったのは、日系人という差別を撥ね退けたいという気持ちがあったのでしょう。
同様に日系アメリカ人であるユウヤも、いろいろな気持ちを抱えているはずで、日本人呼ばわりされることを嫌がっています。 彼が、日本人の血を引いていることを誇りに思う日は来るでしょうか。
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軍事関連の知識はエースコンバットで得た程度で少ないし現実的でないので参考になります。
自衛隊の戦闘機はアメリカの戦闘機を弱体化させたものだろうぐらいに思っていましたがちゃんと日本を防衛するために工夫を凝らしてるんですね。
日本独自開発の兵器は、バランスが良いとは言えないけれど、一芸に秀でているものが多いですね。そのあたりの特徴が、戦術機でどのように表現されるのか楽しみです。