現代の戦争の悲惨さを描くには、旧ユーゴスラヴィア情勢は外せないのでしょう。 ヨルムンガンド 第9話 『Dragon Shooter phase.1』 のレビューです。
かつてユーゴスラヴィアという国があり、今は多くの国に分裂していますが、その分裂の過程でいくつもの悲惨な戦争がありました。 例えばクロアチア戦争。 クロアチア人とセルビア人は人種は同じで、言語もほとんど同じで、宗教もキリスト教で、宗派がカトリックか正教会かの違いですが、それだけを根拠に憎しみ合って殺し合ったのでした。 近代兵器で武装した軍隊や民兵が、「民族浄化」の大義の元に、互いの民間人を虐殺したのです。 劇中でも語られていましたが、「民族浄化」というおぞましい言葉が、最初に使われたのもこの地だそうです。
クロアチア戦争と、それに続くボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で、特に残虐だと恐れられたセルビアの民兵組織があり、名前をスコーピオンと言いました。 今回のT共和国のモデルはセルビアで、民兵組織バルカン・ドラゴンのモデルはスコーピオンなのでしょう。 「虐殺ショー」を撮影しようとしていましたが、実際彼らが自分で撮影した虐殺の証拠ビデオがあり、BBCのサイトに残っています。 6人の男性が殺されていますね…
そんな背景を知っていれば、このエピソードがより味わえるのではないでしょうか。 最上級に厄介な連中とココは対立することになったわけですが、どうやってこの場を切り抜けるのでしょうね。 また、ココの「世界平和のため」という理想で、この地のどうしようもない現実を改善することができるのでしょうか。
今回の前半は日常描写で、リラックスした雰囲気と、いつになく明るいヨナが印象的でした。 ヨナは生きることを楽しめるようになってきたのでしょう。 そんな矢先に、悲惨な現実に引き戻されたわけで、不憫なことです。 彼が笑顔になれる結末はあるでしょうか。
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