メルクマール

とても過酷なストーリーですが、この話の凄みは、後半の残酷さよりもむしろ、前半の幸福な描写でした。　Aパートの途中までの10分に満たない尺で、子供時代の切嗣の純粋な憧れや、シャーレイの魅力を瑞々しく描いています。　この前半があるから、後半との落差に眩暈がするし、父を殺すという展開に一定の説得力を与えています。

シャーレイはいかにも島の娘という感じで、素朴さと肉感的な色気が同居しているのですが、単に素朴なだけではなく、心には闇を抱えていたようです。　そうでなければ、人体実験を自らやろうとは思わないでしょうから。

それを語るには、あまりに尺が短かったので、想像するしかありません。　思うにシャーレイは、切嗣の父に恋をしていて、でも魔術一筋の彼には相手をしてもらえず、かつ弟子としても所詮切嗣が本命だということで、行き詰っていたのではないでしょうか。　その状況を打開して、彼に認めてもらうために、実験中の薬を飲むという無茶をしたのでは。

そして切嗣は、シャーレイがそこまでやるのを目の当たりにして、シャーレイの父への想いを悟ったのではないだろうか。　父を殺すというのははよっぽどの理由なので、父の研究が許せないという義憤だけではなく、シャーレイの父親への想いがシャーレイを殺したという、恋敵としての怒りもあったのではないかな。

切嗣は魔術師殺しと呼ばれているようですが、それは魔術への憎しみから、魔術師を狩るのに容赦が無いからでしょうね。　でも一方で自らも魔術師として、聖杯戦争に参加しているわけで、矛盾のあるキャラだと言えます。　きっと父親のことを憎み切れない部分があるのでしょう。　そしてそれは、彼を今も苛んでいるのでしょう。

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