演奏シーンにはそもそも期待していましたが、裏切られなかったですね。 坂道のアポロン 2話 『サマータイム』 のレビューです。
薫は千太郎たちのセッションにいきなり突っ込まれて、最初は戸惑っていたけれど、最後はけっこうノリノリで演奏していました。 ジャズとクラシックの違いはリズムだけではなく、コード進行も違います。 クラシックでは、いわゆる「ドミソ」みたいな、1度・3度・5度で重ねた綺麗な和音を主に使うのですが、ジャズで綺麗な和音を使うことはほとんどなく、7度・9度・11度といった不協和音的な音(テンション)を混ぜていて、これがジャズっぽい響きを作ります。 薫にとっては不慣れなはずですが、ちゃんとジャズのコードを押さえていました。
ジャズのコード進行には基本パターンがあり、代表的なのが「ブルース・コード」ですね。 3つのコードだけで出来ていて、進行もだいたい決まっているので、ジャズミュージシャンが「じゃあセッションしようか」と言って即興で合わせる時は、このブルースコードで演奏することが多いそうです。 こちらのサイトに詳しいのでご興味があれば→コード理論 >ブルースコード
今回のセッションも、ブルースコードを基調にしていました。 薫はレコードを聞き込んで、ブルースコードがだいたい分かっていたので、すぐに合わせられたのでしょうね。 パターンがあるとは言え、ジャズは自由なので、そこからノリで崩していきます。 ベースもラッパもだんだんコードを崩していましたが、薫はそれにも付いていって、最後はかなり自由に演奏していました。 これは天性かもしれません。
演奏のリアリティはさすがですね。 作画もさることながら、薫がピアノを弾き始めて、他のメンバーがおっと一瞬驚いて、でも「やるじゃん」と感じて「じゃあこれでどうだ」と掛け合いをしていく様子が生き生きと描かれており、生のセッションを見ているかのようでした。
3人の人間関係も、着実に進歩しています。 薫は律子にベタ惚れですが、そもそも友達が一人もいなかったところに、可愛い女の子に優しくされたら、そりゃ惚れますよね。 ジャズをマスターしようとするのも、律子にモテたい一心からなのですが、そいういうものではないでしょうか。 ミュージシャンのインタビューで、音楽を始めたキッカケを聞かれて、「モテたかったから」と答える人は多いですし。
律子と千太郎の関係が気になる薫ですが、あの二人は互いに異性としては意識してないですね。 食べかけのアイスを分けあうことになんの疑問も持っていなくて、兄弟みたいなものなのでしょう。 でも「薫さんの前でそんなこと言わないで」とか恥ずかしがっているので、律子は薫のことは意識しているようです。 ファイトだ!薫くん。
実際、薫くんがんばっていますしね。 多人数で囲まれて暴力を振るわれるのは、チビりそうなくらい怖いだろうに、律子の前ではみっともないところは見せられないと果敢に挑んだのでした。 どちらかといえば、千太郎の信頼を得ることに繋がったようですが。
いまどきだと、喧嘩して怪我したとなると、両家の親とか学校とか出てきて大変なことになりそうですが、この作品は数十年前の田舎が舞台ということで、「また悪ガキが喧嘩したか」くらいで済んでいるのが、古き良き時代という感じです。 そんなノスタルジーと、ジャズの響きがよく似合うのでした。
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ただ、漫画で読むよりはアニメで音楽を感じながらの方がこの作品はもっといいものになると思いました。w
以前この枠で放送された、クラシック題材作で感じていた演奏シーンのストレスが、見事に解決されていますね。
各エピソードはクラシックジャズのタイトルで統一されそうですが、これはアニメ独自の粋な演出のようです。
きっとジャズファンやミュージシャンが、我が意を得たりとこだわって造り込んだのでしょう。素晴らしい。
音楽担当の菅野よう子さん自身、かつてジャズに対して否定的だったそうで、それでもカウボーイビバップのテーマ曲は、和製ジャズのスタンダードになり得る傑作でした。
このあたり、クラシック一辺倒だった薫が、ジャズに傾倒して行く過程に含みを持たせての起用ではないかと深読みしています。
ノイタミナでは原作ものは丁寧に、オリジナルは野心作と、面白い作品が発表されていますが、以前放送された「C」など、子供が見向きもしない分野を扱った作品の企画を通したあたり、相当に懐の深さがあるようですね(笑
原作読まれましたが。僕はなるべく新鮮な気持ちでアニメを見たいので、原作は終わるまで見ないようにしています。
ただこの作品は、アニメでは実際に音楽が付くことで、だいぶ雰囲気が変わるでしょうから、2度楽しめるのかもしれませんね。
■こにぃでさんコメントありがとうございます!
そうですね。某作品よりは、演奏と絵のシンクロ度が高いように思えます。ジャズに対するこだわりを感じますね。サブタイトルもそれを現わしているのでしょう。
管野よう子さんは、根っからのジャズの人では無かったのですか。それは意外でした。
ノイタミナは、むしろオリジナルのほうが好きだったのですが(Cも大好きです)、この作品はとても良さそうです。ハチクロ以来のヒットかもしれません。