2012年春アニメの感想第1弾です。 やや期待と違うところもあったけれど、期待作には違いないですね。 宇宙兄弟 第1話 『弟ヒビトと兄ムッタ』 のレビューです。
『生録ブーム』というのが1970年代ごろにあったそうです。 SL(蒸気機関車)が消えつつあった時代なので、その音を残そうということが大きなモチベーションだったようですが、それだけでなく、鳥のさえずりや小川のせせらぎなど、いろいろなものの音を録音して楽しんでいたようですね。 僕の家にも、父親が使っていた機材(ポータブル・テープレコーダーと外付けのマイク)がありました。
ムッタたちが子供の頃に使っていたのは、まさにそれくらいの時代の生録機材に見えました。 たぶん、元々は父親のものなんでしょう。 兄のほうは指向性のガンマイクを持っていました。
そんな小道具にはニヤリとさせられたのですが、ストーリー展開のほうは、ややリアリティに欠けるなと感じてしまいますね。 ムッタは32歳の若さで自動車メーカーの設計主任で、しかも開発した車が賞を取った(おそらくカーオブザイヤーのこと)ということで、超エリートじゃないですか。 他社が引き抜きに来るくらいの人材だと思いますが、上司に頭突きしたくらいでクビで、しかも他のメーカーも雇ってくれないというのは、ちょっとありえないなと。 少なくとも、駐車監視員しか仕事が無いってことは考えにくい。 そのため、ムッタがサラリーマンの悲哀を背負っているのを見ても、あんまり共感できませんでした。
近未来の宇宙開発ものということで、ついリアリティを求めてしまうのですが、この作品はそうではなくて、もっとお伽話的なものなのかもしれません。 ムッタの自動車設計者としての経験が、今後生きてくるのでしょうか。
二人の人物が、別々の道で宇宙に向かう様を描くという設定は、『MOONLIGHT MILE』とカブりますね。 あちらは登山仲間のライバルで、こちらは兄弟という違いはありますが。 ちなみに『MOONLIGHT MILE』で主人公が宇宙飛行士候補になる過程はある意味とてもリアルで、なるほど今後は本当にこういう経歴の宇宙飛行士が登場するのかもしれないな、と思えるものでした。 そういえば、あれも主人公の一人の声が平田さんでしたな。
二人が切磋琢磨する様子が、家族愛も絡めつつ描かれることになるのでしょう。 オープニングの映像が素晴らしかったし、本編も背景などのクオリティが高かったので、宇宙のシーンでのスペクタクルに大いに期待しています。
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これはちょっと語弊がありますね。リアリティは充分にある作品ですよ。でなければ原作があれだけの傑作と称されるはずは無いですから。
上司に頭突きしただけでクビというのも少し見落としておられるようで。正確にはあの上司がとても陰湿な性格で六太が再就職出来ないように裏で関係各所に徹底的に根回ししていたからです。それプラス六太がとても不器用な性格をしているのもあり、自動車会社以外の就職は無理だと最初から諦めているという点も加味して考えるとこの六太のケースは充分有り得るケースでしょう。
これだけでリアリティが無いと決め付ける前にもう少し視聴を続けてから判断された方がよろしいかと。原作の面白さからしてストーリーの面白さは保証されてますから。
自動車メーカーの設計主任は40代以上が普通で、32歳で設計主任(開発スタート時は20代だと思われる)というのは超優秀な将来を嘱望さえる人物だったはずです。そんな人が応募してきたら、どこでも大歓迎なはずで、上司の根回しがあったとしてもライバルメーカーはそんなことは気にしないでしょう。
仮に自動車業界への就職がダメだったとしても、技術者および開発マネージャーとしてのスキルを生かす職場はいくらでもあるわけで(就職難と言いますが、優秀な技術者は不足しています)、駐車監視員をやることはありません。
重箱の隅を突くつもりは無いのですが、この作品は兄と弟の対比を際立たせて、底辺の兄が輝かしい弟に迫るところを見せたいのでしょうから、兄が底辺であることに説得力が必要で、そこにリアリティが無いのは残念だと思ったのでした。