メルクマール

響が、特別な力を持っている理由が語られました。　シンフォギアの力は聖遺物から来るのですが、人と聖遺物は異なる存在なので、力を使った反動が人体に跳ね返ってくるため、聖遺物の力をフルに発揮することができないという原理的な制約があるようです。

でも響は、胸に突き刺さった聖遺物が響の体と癒着して、人と聖遺物の融合体のような存在になっているために、反動を受けることなくフルパワーを発揮することができるはずだ、と了子は期待しているのですね。 　パラダイム・シフトだと。

了子が見ていた右の映像は、響の体内をスキャンしたものなのでしょう。　黒いものが聖遺物だとしたら、体内をくまなく浸食しているのが分かります。　日本住血吸虫を連想しました。 日本住血吸虫は、幼生が水中に棲んでいて、皮膚から人間の体内に侵入し、肝臓などで産卵します。　そこで増えた虫たちは、宿主の体中の血管に寄生します。　特定の地域限定で発生して、その地域では成人の半数は罹患して死ぬという恐ろしい病気だったのですが、血管に寄生する寄生虫という他にない性質のために、原因究明と治療法発見には長い時間がかかっています。　そのあたりのストーリーは、Wikipediaの『地方病 (日本住血吸虫症)』のエントリーに素晴らしい筆致で記述されていて、一読の価値があります。

話が逸れましたが、皮膚から体内に侵入し、やがて体中に蔓延るということから連想したわけです。　翼は自分のことを「人ならざる身」と言いますが、響のほうがはるかに「人ならざる身」で、聖遺物に近いと言えるのでしょう。　日本住血吸虫はやがて宿主を殺しますが、聖遺物はどうでしょうか。

「人がその身に負荷なく絶唱を口にし、聖遺物に秘められた力を自在に使いこなすことができるのであれば、それは遥けき過去に施されし、カストディアの呪縛から解き放たれた証」

と了子は言っていました。　聖遺物は過去の超文明か何かで作られたもので、そのころは、力を自在に使いこなすことができていたのでしょう。　今それができないのは「カストディアの呪縛」であり、それから人類を解き放つのが、了子の目的であるようですね。　やはり、ノイズに対抗するというのは方便にすぎず、むしろこの目的のための自作自演というのが濃厚です。　その目的は、たぶん響や翼が戦う理由とは違うので、ラスボスは了子ということになるのでしょう。　

響と翼が、かなり分かり合えたのとは対照的に、響と未来の関係はこじれてしまいました。　4話のレビューで、未来は和解したように振る舞いながらも、腹にはいろいろ抱えていると書いたのですが、それがついに破裂したようです。　誰しも、他人に言いたくないことの一つや二つはあるものですが、未来は、自分が秘密を持たないのだから、響も持たないのが当然だと考えていて、幼稚な自己愛の延長線上にあると言えるでしょう。　和解のためには、未来がそこから成長する必要があると思えます。

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