メルクマール

『隠者のエピタフ』さんが「ダサカッコイイアニメ」と表現されていて、まったくだなぁと思いましたね。　あちこちダサいなと思ったり、突っ込みどころが豊富だったりするのですが、でもなんか気になるし、カッコ良くも思える。　そしてそれは、ある程度狙っているんじゃないかと。

話は飛ぶのですが、その昔、携帯電話の着メロ機能が、単音から和音が出るようになった頃、僕はその音がひどく歪んでいるのが気になっていました。　で、その時に一緒に仕事をしていた協力会社の人との雑談で、なんとなく「あれ音酷いですよねー」と話したら、「あの音源チップ、うちが作ったんですよ」と言われてアチャーとなったのですが、その人の話によれば、あまりクリアな音では着信したときに気付きにくいので、あえて耳に引っかかるように歪ませているのだと言ってました。　そういうこともあるかもしれません。

オーディオ機器を設計する時も、原音に忠実ならば良いというわけではなく、評論家に聞かせて「もうちょっとストリングスを前に出して欲しい」とか言われると、歪ませる方向で調整することがあるそうです。　スピーカーなども、例えばJBLなどは特性的には歪みまくっているのだけれど、それが味だから良いという人がいるのですね。

音楽にしても、綺麗な音だけでは面白くないわけで、不協和音を入れたり、歪んだ音を入れたり、あえて音質を落してローファイにしたりするわけです。　そういう”ノイズ”を混ぜることで、耳に引っかかり、より音楽が引き立つわけですね。　この作品の原案は音楽家の上松さんですから、”ノイズ”の重要性は肌で分かっているわけで、アニメを作る上でも、そういう感覚を大事にしているのではないでしょうか。

いまどきのアニメは、戦闘シーンではCGによるエフェクトが多用されていて、豪華に見せることができるのですが、このアニメはそれをほとんどやっていないので、古臭くも見えます。　でもそういう”ローファイさ”を狙ってやっているのであって、メカのディティールの８０年代っぽさなども含めて、ノイズとして視聴者が引っかかるようにあえてやっているのでしょう。　だから「ダサカッコイイ」のだと。

そう考えると、”ノイズ”なる存在も、災害扱いされていますが、悪いことだけとは限らないかもしれませんね…

設定には、突っ込みたくなりますけれど。　”ノイズ”が同じ地域に集中して発生するのは、特異災害対策機動部の本部の地下にある聖遺物（デュランダル）を目指しているからだ、という設定はエヴァンゲリオンのまんまですが、エヴァはそれを承知の上で、都市を要塞化して立ち向かっているのに対して、この世界ではそういう措置はなく、真上では何も知らない生徒たちが学園生活を送ったりしています。　それはどうなんよ、と思いますが、デュランダル の起動のためには、あの学校の生徒たちが必要なのでしょうか。

まぁ、多少強引な展開も、テンポが良いことの代償ではあるでしょう。　細かいことよりは、ノリで走りぬける作品でしょうし、今回もちゃんと楽しめました。

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