メルクマール

この作品の第一の魅力は、やはりヒロインたちとの会話シーンで、今回もそれが堪能できました。　長い会話シーンの間を持たせる技術は、もう円熟の域に達していますね。　

撫子の家のシーンがどう映像化されるのか、とても楽しみにしていましたが、期待以上でした。　普段はものすごく引っ込み思案なのに、自分の家だからか、あるいは一念奮起したのか、どのヒロインよりも積極的になるのですよね。　コケティッシュさが映像で強調されていて、普段とのギャップでヤバいです。　しかしツイスターゲームがあんなことになっていたとは…。　小説では、モノローグでさらっと流されるだけなので。

単なるサービスシーンではなく、ここが物語の発端でもあります。　ファイヤーシスターズが何かに首を突っ込んでいて、それがデリケートな問題であることを、阿良々木君が問題視しはじめるという。

でも、「トラブルに自分から首を突っ込んでいる」という点では、阿良々木君も同様なんですよね。　戦場ヶ原を始めとして、ヒロインたちのトラブルに自分から首を突っ込んでいったことは棚に上げています。　具体的な問題はまだ起こっていないのに、妹たちのことを先回りして心配して、あれこれ気を配ったり説教する様子は、妹たちの保護者かナイトのようです。　正義の味方です。

「ファイヤーシスターズの行為は、やはり、正義の味方ごっこでしかないのだと。　僕の自慢の妹たち、お前たちはどうしようもなく、偽物なのだと」　
と言っていますが、正義の味方ごっこという点では阿良々木君も同様で、妹たちはそんな阿良々木君を見ていたからこそ、同じことをしているのではないでしょうか。　「偽物」には「自分の偽物」という気持ちも含まれているのでは。　一方で、この文脈で「自慢の妹たち」と言っていることから、そんな「偽物」な妹たちを可愛く思ってもいるのでしょう。　同族嫌悪と自己愛の投影がないまぜになった感情は、兄妹間に普遍的なものではないでしょうかね。

「ご近所の評判になったりしたらどうするんだ」と説教する兄に対し、「兄ちゃんは自分のことを棚上げにしている気配が…」と返していましたが、ということは、阿良々木のやんちゃっぷりもご近所の評判なのでしょう。　逆立ちして歩く妹に、自転車ごと激しくアタックする兄もどうかと思うし。　やはり似た者兄妹です。

兄弟（兄妹）って、ほとんど生まれたときから一緒に暮らしているわけで、積み重ねたものが膨大にあり、他人からはわかりにくい独自ワールドがあるのですよね。　それがあまり説明されずに視聴者の前に展開されるので、言外の部分は推理することになるのですが、小説とちがって映像があることで、情報量が増えますね。　アニメの火憐は原作の印象よりキュートで、これは彼女の心情を映像表現しているのでしょう。　積み重ねたものだけでなく、これからの体験によって変わっていくものもあり、そんな兄妹の関係性が映像でも描かれることを期待しています。

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