メルクマール

この物語の基本は、「ボーイ・ミーツ・ガール」でしょう。　男の子が女の子に出会い、瞬間的に恋をして、その娘のために頑張るという古典的なプロットです。　なので集といのりの関係が軸ですが、いきなりラブラブになっては、そこで話が終わってしまうので、多少の『すれ違い』は必要です。

前回、いのりは涯の指示を無視して、集を助けるために暴走し、そのことで集はいのりを信じることにしました。　危険を顧みず、戦場に飛び込んだいのりを抱きとめたとき、たしかに心が通じたと思ったはずです。

でも実は、そうでも無かったのですね。　集はいのりのために、葬儀社に見を置くことになりましたが、いのりはたぶん、そうなったことを後悔しているのでしょう。　なにしろテロリストですからね。　いのりが集に惹かれているのは間違いないのですが、その想い人をテロリストにしてしまったことに責任があるわけで、今回のいのりのつれない態度はそのせいでしょう。

でも集は、そこまで気がまわらないので、「やはり全ては涯のお膳立てで、自分はだまされたのでは」という疑惑が再燃します。　そしてそれを助長するような出来事もあり、集はすっかり混乱していますね。　大いに悩むがいいでしょう。

今回のもう一つのテーマは、集の訓練ですが、訓練そのものはあまり意味が無かったような。　ハイポート（銃を両手に掲げて走る）は軍隊の新人いびりの定番ですね。　でも模擬戦は、集が仲間として認められるための通過儀礼として必要でした。　集の特殊能力を、葬儀社のほとんどのメンバーは見ていないわけで、それを目の当たりにして初めて、集に重用される理由を理解したのでした。

集がいよいよ葬儀社の一員として動き出す『新章』の前の、ワンクッションのような回でした。　地味ではありますが、こういう回があることで物語世界に深みが出ます。　次回は派手な展開になりそうですね。

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