なるほど、3話で一段落と言われていただけあって、納得度は高まりました。 機動戦士ガンダムAGE 第3話 『ゆがむコロニー』 のレビューです。
正直、1,2話にはピンと来ないところがあったのですが、それはストーリーというよりは、キャラのセリフや行動が薄っぺらく感じられたからでした。 その人や、その世界で積み重ねられたはずのファクト(架空の事実)に裏打ちされたものが感じられなくて。 例えば、フリットがあっさりガンダムを任されるとか、軍人たちが外の敵のことを考えずに脱出計画を立てている、とかですね。
3話では、背景要素が補完されたため、「なるほどね」と思えてきました。 まず今回の主役と言えるブルーザーですが、彼がフリットに目をかけている理由が明かされました。 フリットがまだ幼いころに、アスノ家の生き残りとしての潜在能力を信じて引き取り、彼が育ててきたのですね。 アスノ家は代々『モビルスーツ鍛冶』だそうで、この語感からして、技術を徒弟制的に、ごく限られた人に伝承しているのでしょう。 フリットはそれを受け継いだ、おそらく唯一の生き残りであり、ブルーザーはそれが人類にとって貴重であることを以前から知っていたのでしょう。
基地が破壊されたので、『旧・計画管理センター』に向かう、という展開もなるほどですね。 宇宙では、何かが壊れてももすぐには部品交換ができないことが多いので、一つの機能を多くの部分で受け持たせる”冗長性”が重要です。 惑星探査機のハヤブサが、さまざまなトラブルに見舞われながらも戻ってこれたのは、「念のため」と仕込んでおいた仕掛けがさまざまな局面で使えたからですね。 テスト用の回路とか、系統別に独立して制御できるようにしておくとか、正常動作時には必要無いものでも、”冗長性”のために残しておくと、いざという時に役に立ちます。
ノーラの旧・計画管理センターは、おそらくコロニー建造時に使っていた施設で、完成したら不要になったけれど、冗長性を確保するために残しておいたのでしょう。 ブルーザーはそれを知っていて念頭にあったので、素早く行動できたわけです。
コアを分離して避難船に使う仕掛けも、おそらく「念のため」に仕込んでおいたものなのでしょうね。 正規の避難手順では無さそうですが、いざというときにそういうこともできるようには、考えられていたのでしょう。 推進機関はあるが、コア単独では姿勢制御できないという中途半端な仕様ですが、あまりコストをかけず、既存のものの組み合わせで「念のため」に作った仕掛けだとすれば、納得できます。 推進機関は、コロニーの移動や位置制御のために必要で、それを脱出用エンジンに転用したわけです。
コロニーが崩壊する様子はスペクタクルだったし、それを見たコロニーやディーバの人々が、痛恨の表情を浮かべているのが印象的でした。 彼らにとっては故郷で、さまざまな思い出があるでしょうから、それが失われて、一瞬に宇宙の藻屑に消える様子はショッキングでしょう。
ガンダムらしい活躍が見られたのも、今回の良かった点です。 フリットが潜在能力に目覚めたようですが、あれはニュータイプなのでしょうか。 この世界は宇宙世紀よりも未来なので、ニュータイプがウヨウヨしていても不思議は無いと思えるのですが、そのあたりがどうなのか気になります。
ユリンは、謎めいていていいですね。 フリットがユリンと別れるとき、切なそうな表情をしていましたが、二人で生死をかけた戦いをして、何かが通じ合った体験をしたのだから、彼の切なさを共感できました。 一方、正ヒロインのはずのエミリーの影が薄いわけで、今後の活躍に期待しています。
UEも謎めいています。 エイノアはコロニーのコアを破壊されることを危惧していましたが、そうではなく、放棄されたはずの基地を攻撃したのは、あくまでコロニーの破壊ではなく、基地が目標だったのでしょう。 となるとAGEシステムが目当てでしょうか。 フリットの故郷が襲われたのも、たぶん同じ理由で。
そもそもAGEシステムはUEが作ったもので、アスノ家はそれを無断使用していて、UEは「特許料払え!」と怒っている、という仮説を立ててみました。 アスノ家が払わないので、仕方ないから差し止めに実力行使に来たと。 ガンダムには『冷戦』の影響が強いので、戦争の理由はたいていはイデオロギーの対立ですが、ダブルオーは世相を反映して、『テロとの戦い』がテーマでした。 AGEは『特許抗争』がテーマだとしたら、さらに今風だと思いますが、まぁ無いな…
そんなわけで、先が気になる要素はあるし、物語のノリもだんだん良くなってきました。 今後のさらなる盛り上がりに期待しています。
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