メルクマール

あからさまに胡散臭かったので、逆を行って成功するのかと思いきや、見た目通りだったというオチでした。　でも主題はそこじゃなくて、若旦那と崇子、そして若旦那と女将の絆の話なのでしょう。

崇子は、詐欺話を持ち込んだ張本人なのに、責任逃れ的なことを言うばかりで、いいところが無いのですが、唯一、プールを無念そうに眺めているシーンが、彼女の心情を語っていました。　プールにこだわりを持っていたのは若旦那なので、若旦那の夢を叶えられなくて残念だと、本心から思っているのでは。　若旦那は、そんな様子や、勝負服を着てくれていたことから、崇子が自分のためを思ってくれていると感じ取り、感極まって抱きしめたのでしょう。

彼は子供の頃から姉に劣等感があって、母親は姉のことばかり見ていると感じていて、自分のことを見て欲しいという気持ちが強くあります。　彼は崇子に、姉や母親を投影しているので、そんな崇子が自分を気にかけてくれていることが、何より嬉しいはずです。　そんな彼の気持ちが、崇子にも伝わるといいのですが、あの様子だと伝わったのかな。

女将も、姉の方に期待して、姉ばかり見ていたことを自覚して、反省しているのでは。　皐月に久しぶりに会ったことも、それを再確認する機会になったはずです。　だから今回は、若旦那がやりたいようにやらせようと決めたのでしょう。　彼は子供の頃から、ピアノも水泳もモノにならなかったけれど、映画は真摯に好きだったものなのでしょう。　ならばここは好きなようにやらせてやろうという、親バカな気持ちだと思われます。

結果的には失敗だったけれど、若旦那はへこたれていないし、責任を人に擦り付けず、毅然と責任を取る態度なのは、好きなことをやろうとしたという点で、悔いは無いからです。　女将はそんな若旦那を見て、まんざらでも無さそうでした。　厳格な女将も、普通に親バカだというお話なのでしょう。

戦闘機が飛行機雲を曳いて飛んでいます。　皐月は、戦闘機を自分に重ねて、高く空を駆ける気持ちになったことでしょう。　若旦那には、飛行機雲が自分を地上に取り残して、空に飛び去っていくように見えたのではないでしょうか。　一方、結名は「変な雲」と思っただけでした。　

ちょうど夏ということで、季節感のあるエピソードでもありました。　「夏の思い出」って、誰にでも特別なものがあるはずです。　余韻を残した、ちょっと変わったテイストのエピソードですが、それぞれの人が、それぞれの夏の思い出に重ね合わせて楽しめばいいのかもしれません。　飛行機雲を見て感じることが、人それぞれで違うように。

ポチッとして頂けると励みになります！↓