秀吉の深みを増すエピソードでした。 へうげもの 第15話 『時代は変わる』 のレビューです。
このところ、光秀にフォーカスが当てられていたので、秀吉はヒール(悪役)でした。 でも光秀亡き今、これからは秀吉の時代であり、秀吉をどう描くのかには興味がありました。
清州に現れた佐介を見て、秀吉は「お前を呼んだ覚えは無い」と冷たく言います。 秀吉は既に弥助を捕縛していて、その話を聞いていたので、佐介の只ならぬ様子を見て、事情を薄々察したのでしょう。 そして佐介が 弥助の助命をしたことで、確信に至ったと思われます。 佐介は、自分が信長を殺したことを知っていると。 なので先回りして自分でぶっちゃけ、佐介を恫喝しました。
秀吉は「ようやく泣けた」と涙を流しましたが、それは、佐介を失ったことの喪失感ではないでしょうか。 彼は家臣や盟友と、常に利害や恫喝で関係していて、友人や忠臣と言える人はいないのかもしれません。 佐介がそれに一番近い存在だったのに、信長殺しを知られたからには、それも失われてしまうに違いない。 そう思って、信長を殺した時には泣けなかったのに、この時始めて泣けたのでは。
佐介が言ったように、秀吉は孤独な人なのでしょう。 そして佐介は、そんな秀吉に仕える決意を新たにします。 非情で孤独な秀吉に、信長を重ねたのかもしれません。 このエピソードで秀吉の本心に触れることができて、秀吉が少し好きになりました。
待庵はすごいですね。 侘びとは、短い人生で美のエッセンスを楽しむためのもので、つまり効率の良さがポイントだと勝手に思っているのですが、待庵はまさに効率的です。 一切の無駄がなく、亭主と客の1対1の時間を濃密に生きることができる。 老い先短い千宗易だからこその発想でしょう。 「死に近づけば近づくほど、侘びもまた、はっきりと分かってくるもの」 だからです。
安土城を燃やすエピソードも面白い。 史実でも、安土城は本能寺の変の直後に消失しているのですが、なぜ燃えたのかは不明なのだそうです。 このエピソードみたいなことが、もしかしたらあったのかもしれませんね。 千宗易の暗躍っぷりは半端無いです。
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高潔の士、明智光秀の死は信長公の退場回より心に響きました。黒好みの千宗易とは正反対の魂を持った人物として描かれたようですね。
光秀=南光坊天海説をとって生き延びさせるかとも思ったのですが、むしろ今作品での光秀の人となりに相応しい、潔い最期でした。
実は勝手に「和製ルクレツィア・ボルジア」と思い込んでいるお市の方の登場を心待ちにしていたのですが、気位が高く華奢で黒目がちな楚々とした美女、というイメージが崩れ落ちてしまいました(笑
なんて白目がちで根性の入った毒婦…気に入らない男の寝首を掻くタイプですね(汗
おかげで左介の妻・おせんの陽だまりのような人柄が引き立ちました。
派手もの侘びもののどんな逸品よりも、こんな善い女房を手に入れた古田左介は果報者だと思います。
光秀が生き残った説もあるのですか。それはそれで面白いですが、彼の死は、「侘び」を表現するためにも必要だったと思えます。
お市は、乱世に翻弄されつつも娘たちを守った強い女性というイメージなので、あんなふうかなと僕は思っていました。美人だったのは確かなようで、もうちょっと綺麗に描いてもらってもよかったかな。
この後、お市や茶々にはいろいろあるわけで、そこに佐介がどう絡むのか興味深いです。