信長との決別。 へうげもの 第13話 『スキヤキ』 のレビューです。
コメント欄で教えて頂いたのですが、この作品のサブタイトルは、すべて楽曲の名前から取られているのですね。 それも80年代くらいの洋楽が多いようです。 今回のサブタイトルの『スキヤキ』は、坂本九の『上を向いて歩こう』の別名ですね。 アメリカのビルボード誌で3週連続1位になり、年間でも4位を取ったという、日本人ミュージシャンで最も成功した曲です。
この曲は、独特な抑揚の歌い回しが特徴的ですが、作詞者の永六輔はそれを聴いて激怒したそうです。 当時、若手の歌手が大御所の作詞家に逆らうのは難しいはずで、逆らって潰された歌手はいくらでもいるのですが、坂本九はあくまで押し通します。 ジャズっぽい歌い方なわけですが、歌謡界では不評だったそうで、大ヒットしたのにレコード大賞を取っていません。
でも、あの歌い方でなければ、世界での成功は無かったでしょう。 まずジャズとしてイギリスでカバーされ、それをきっかけに原曲がヒットしたからです。 世間の評価を気にせず、自分が”良い”と思ったことを貫いたから、歴史的な作品を残すことが出来たのですね。
この生き様は、古田佐介に通じるものがあると思えます。 前フリが長かったですが。 この作品で描かれる古田佐介も、世間の価値感にあまり縛られず、自分の基準で”良い”と思うことを貫いています。 ハートのノボリは斬新すぎて、たいていの人は微妙だと思っていますが、その先進性を理解する人もいました。 流行や権威ではない、普遍的な美意識に訴えているのですね。
この時代、牛馬の肉を食べることは禁忌とされていましたが、全くためらわずに、喜んで食べていました。 つくづく、自由な感性の人です。
そんな彼が、信長の本当の仇は秀吉だと知ってしまいます。 これまでは、秀吉に仕えることで、忠義と立身出世の両立ができたのに、一転して板挟みになるのですね。 でも彼は、秀吉を恨むことができず、生き延びるためにも、このまま秀吉に仕えることを決めたのでした。 この葛藤のシーンは、迫ってくるものがありました。 乱世に生きる武将として、ギリギリの決断ですね。
そしてこれが、佐介が信長と決別した瞬間なのでしょう。 信長への忠義は、彼の背骨のようなものだったはずで、それを失った彼がどう生きるのか、やや心配ながらも興味深いのでした。
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