メルクマール

『脱出ゲーム』は古典的なアドベンチャーゲームのスタイルですね。　ある場所から、ヒントを集め、何度も失敗しながら、なんとかして脱出するというものです。　アドベンチャーゲームの黎明期からあり、少し前にWebゲームでリバイバル流行して、最近は生身で体感する”リアル脱出ゲーム”が人気みたいですな。

この作品は、リアルな秋葉原を舞台にしているのもウリですが、ホームグラウンドだと思っていた秋葉原から、脱出しなければならない状況になったわけです。　よく知っている街が、一転してダンジョンとなって牙を剥いたようで、独特の怖さがあります。　拳銃だけでなく、クルマとか地下鉄といった、ありふれたものも凶器になるという。

脱出ゲームは、何度も失敗して、学習することで解くゲームです。　岡部も、タイムリープマシンが完成したことで、「セーブポイントに戻ってやりなおす」が出来るようになりました。　Dメールでは、世界が改変された結果を知るだけでしたが、タイムリープでは、世界の改変に積極的に関わることが出来ます。

しかしあれ、”意識”ではなくて”記憶”だけを送っているのですよね。　視聴者は岡部の視点にいるので、岡部の意識がタイムリープ後も連続しているように見えます。　でも実際はそうではなく、過去の岡部が未来からの電話に出た時点で、未来の記憶が流れ込んで、これから何が起るか知る（まだ体験していないことを体験したと感じる）、ということなのでしょう。

だから、厳密にはタイムリープではありません。　タイムリープマシンで記憶を送った岡部自身は、その世界線（まゆりの死んだ世界）を生き続けるからです。　でも過去の岡部（記憶を受け取った人）が頑張れば、世界線が改変され、その岡部にとっても「まゆりが死ななかった世界」になります。　ゆえに事実上、タイムリープだと言ってもいいのでしょう。　”世界線改変”の設定がうまく働いているわけで、シンプルな仕組みでタイムリープを実現した、上手いやり方だと思えます。　”意識”の問題を扱うと、さらに厄介ですから、そこは避けたということです。

岡部が、ああいう痛々しいマッドサイエンティストになったのは、まゆりのためだったという過去が語られました。　彼にとって、マッドサイエンティストであることよりも、仲間のほうが重要に見えたのですが、そういう由来であれば当然ですね。　もはやマッドサイエンティストであることはどうでも良くなっているようで、電話でも「岡部だ」と名乗っていました。

以前に3回も、サブタイトルに「ホメオスタシス」（恒常性）と入っていたので、よほど重要なんだろうとレビューにも書いたのですが、まさに今回、恒常性を見せつけられることになりました。　これまでも、Dメールで過去改変しても、人間関係にはなぜか変化は無かったのですが、今回はどうやっても、まゆりが死ぬという過去を変えることができませんでした。　世界線が変わっても、人間関係には恒常性（ホメオスタシス）があり、簡単には改変できないようです。　岡部はどうすれば、まゆりを救うことができるのか。　また同様に、撃たれたはずのクリスも気になります。

4時間前ではなく、もっと前の時間に戻る方法はあるのでしょう。　48時間前までは戻れるのですよね。　でも大きく過去に戻るほど、脳の状態に齟齬が出るので、リスクは高まりそうです。

『岡部　対　SERN』 であり、『岡部　対　秋葉原』であり、『岡部　対　時空』でもあります。　面白くなってきました。

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