メルクマール

倫太郎が実験を自主的にやめたのは意外でしたが、これは優先度の問題なのでしょう。　彼はマッドサイエンティストを気どって、ラボを運営していますが、そもそもそれは、「仲間が欲しい」という願望のための手段だったのでしょう。　自分でもそう言っていましたし、「ラボメンを守る」ことにこだわっています。　せっかく集めた仲間なのだから。

前回、どこからか強迫されて、仲間を失う恐怖を味わった彼は、マッドサイエンティストのスタイルを曲げてでも、仲間を守ることを優先しました。　早めに公開したほうが安全だと考えたわけです。

SERNはきっと、倫太郎たちを泳がせていたのでしょうね。　自分たちにはできないことを、偶然とはいえ発明したようなので、その経過を観察して、成果を奪いたかったのでは。　でも公開されては困るので、それを察知して踏み込んできた、ということなのでしょう。

SERNはタイムマシンを独占して、歴史を操ろうとしているというのはジョン・タイターの言い分でしたが、それを裏付けるような展開です。　そしてそのためには、殺人も平気でやるらしい。　まさにディストピアですが…

ブラックホールによって、3.24テラバイトの情報を36バイトに圧縮かぁ。　いや、面白いですね。ありえるのかも。　というのも、ブラックホールの中で情報がどうなるかは、良く分かっていないからです。　ブラックホールに物質が吸い込まれると、それは金輪際出て来れないわけではなく、ブラックホールはいずれ蒸発するので、いつかは外に出てきます。スティーブン・ホーキングの説によれば、そうなります。　でもここに問題があって、ブラックホールに吸い込まれた物質は、元の情報を失って、単なる”ブラックホールの質量”になってしまいます。　どんな物質でも、みなそうなります。　でも、蒸発するときには、元の物質に戻るのだそうです。　ここは難しいのですが、量子力学的にはそうでなければならないらしい。　失われたはずの情報が復元されるというのは、矛盾しているので、「ブラックホールの情報のパラドックス」と呼ばれます。

この原理を使えば、以下のようなことが可能かもしれれません。　まずブラックホールに情報を突っ込みます。すると、情報は失われて、単なる”質量”になるので、その質量をDメールとして送ります。　つまり、”どんな情報か”という内容ではなく、”その情報が何バイトあったか”的な情報だけにするわけです。　これなら、元の情報が何テラバイトあろうとも、36バイトに収まります。

そして届いたDメールの内容から質量を読みとり、その分の情報をブラックホールから取り出します。　何とかして蒸発させるのでしょう。　そうすると、あら不思議、単なる質量のデータから、元の3.24テラバイトの情報が復元されるわけです。　　

bit torrentのようなP2Pのファイル共有では、ハッシュという文字列があって、その文字列を知っていれば、どこかのサーバーにあるファイルを入手することができます。　これはある意味、巨大なデータが、ハッシュの数十バイトに圧縮されたとも言えます。　それに近い話かもしれません。　ブラックホールをサーバーとして、36バイトのハッシュで情報を取り出すわけです。　ブラックホールの中は時空が曲がっているので、情報を過去に届けることができる、かもしれません。

萌郁たちに踏み込まれる直前　倫太郎は砂時計をいじっていましたが、あれは「自分はどこかで選択を間違えたのだろうか。過去へ戻ってやりなおすべきだろうか」という迷いを現わしたものでしょう。　その予感が的中したわけで、まゆりを取り戻すには、過去に戻ってやりなおす必要があるのでしょう。　　でも、時空にはホメオスタシス（恒常性）があるようなので、決まった未来を変えることは容易ではないと思えます。　それでも未来を変えるために奮闘するという、本題がここから始まるのでしょう。

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