以前にツイッターで、「この作品は名作か駄作かのどちらかで、中間は無い」と書いたのですが、名作の方でしたね。 俺たちに翼はない 第12話(最終話) 『俺たちに翼は…』 のレビューです。
ヨージが引き籠っていたのは、母親を殺したショックからで、でもそれが勘違いだったことを知り、さらに小鳩や牧師の言葉のおかげで、彼は立ち直ることができました。 ここまでは、まぁそうだろうなという展開です。
そこからが良かったですね。 ヨージが復活したことで、他の分裂した人格は消えてしまうのかと思いきや、彼はそれらをうまく統合しようとしています。 それも全部、彼自身だから。 鷹志や鷲介や隼人が経験したことは、彼自身の経験であり、その人間関係も彼のものだから。 無かったことにはせず、きちんと説明して、付き合いを続ける道を選びました。
ラストのコンドルのナレーションで、この物語は「例えば、そんなメルヘン」だと言います。 メタフィクション的なわけですが、確かにこれは、ちょっと空想的な物語ではあったけれど、でも似たようなことは君の中にもあるでしょ? と言っています。 ヨージに多くの人格がいたように、自分の背中を押してくれたり、気分を変えてくれるような潜在意識は、誰でも持っているはずだから。
「ISH」とヨージが言っていたので、調べてみたのですが、精神医学の用語で「Inner Self-Helper =内部の助力者」という意味だそうです。 自分を客観視して、支えてくれるような、良心のような存在。 「ISHはDID(多重人格者)だけでなく、 誰にでも生まれた時から存在している」ともあります。
これには2つの意味があります。 まず、DID患者に限らず、誰の心の中にも鷲介や隼人のような存在(ISH)がいて、うまく付き合っているわけなので、ヨージだって、彼らと共存できるはずです。 それは、何もおかしなことではないのだと。 これによって、ヨージだけが生き残り、他の人格は死ぬという展開にならずに済みました。
もうひとつの意味は、ヨージがISHに助けられたように、テレビの前の僕たちも、内なる声に素直に耳を傾ければ、もっと世界は楽しくなるのでは、というメッセージです。 「なぜなら世界はチャンネル次第。君の気分で全てが決まる」 と。 なにごとも気の持ちようで、世の中がつまらないなら、面白くなるように自分のスイッチを切り替えればいいのです。
俺たちは空は飛べないけれど、羽ばたくための翼ならある。 空を飛ぶような能力は無くても、それに悲観せず、心の翼を羽ばたかせれば、やがて幸せもやってくるだろう、という前向きのメッセージでした。 なにかと陰気な話題が多く、人々が下を向いて歩きがちなこの時代にふさわしいと思えます。 何事も心の持ちようだとは、本当にそう思います。
この作品、最初のうちはどうなることかと思いましたが、見事にきっちりまとめたし、キャラは魅力的だし、メッセージ性もありました。 優れた作品だと思います。 それなのに、世間的にあまり評価されていない気がするのが残念ですね。 最初の数話の謎めいた展開が、謎めきすぎたでしょうか。 ユニークなストーリーが、ユニークすぎて理解されなかったでしょうか。 まぁ僕も、多重人格者なのに、外見まで変わるというのが、当初は意味が分からなくて混乱しました。 もう少し説明があっても良かったかもしれません。
まぁ、世間の評価がどうであろうと、これは僕にとって名作です。 出会えて幸せでした。
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>それなのに、世間的にあまり評価されていない気がするのが残念ですね。
僕も楽しんで最後まで見たクチですが、無駄に多いパンチラと、キャラデザの“判子絵”がマイナス要因だったかもしれませんね。
この二つで「この作品は底が浅いお色気美少女もの」と判断して、視聴を打ち切った(もしくは初めから見なかった)人も多かったんじゃないかと思います。
僕も偶然1話を見たので視聴を継続しましたが、それまでは今期のアニメ視聴リストからこの作品を外していましたから。
ギャルゲー原作アニメは、このところアタリが少ないので、最初から避けている人も多いのかもしれません。 僕も期待していなかったのですが、1話をみて「おっ」と思いました。いろいろ損していますよね。
最近、ギャルゲー原作者によるオリジナルアニメが話題になっています。何気に才能の宝庫なんですよね。 このゲームの原作者によるオリジナルアニメも、ぜひ見てみたいなぁと思うのでした。