ふむ、SFホラーっぽくなってきましたね。 Steins;Gate 第9話 『幻相のホメオスタシス』 レビューです。
グロいシーンがあるものだけがホラーなわけではなく、心理的に怖いのもホラーです。 SFホラーではそれが重要ですね。 これまでは、身近なちょっとしたことが改変されるだけだったので、倫太郎も甘く見ているところがありましたが、ついに、”萌えの街”のアキバが、昔ながらの”電機の街”に戻ってしまうという、ドラスティックな改変を目の当たりにすることになりました。 これは怖いよ。
アキバに萌え文化を持ち込んだのがフェイリスという設定なので、フェイリスが、十年後の自分にメールを送り、アキバの未来を変えたのでしょう。 今のアキバにしてしまったことを、後悔しているようで、たぶん父親と何かあるのでしょう。
アキバが”萌えの街”になったのは、誰かがプロデュースしたというよりは、普通に市場原理の働きだと思えます。 アキバはそもそもラジオなどの電気パーツの街で、その流れでパソコンの街にもなり、パソコンゲームの店もたくさん出来ました。 かつては家庭用ゲーム機の性能が低かったので、ヘビーゲーマーはパソコンでゲームするのが普通で、それなりの市場規模があったのです。
でも、PlayStationなどの登場で、家庭用ゲーム機の性能が向上し、多くのゲームメーカーがそちらに注力するようになったので、パソコンゲームは廃れていきます。 唯一、18禁の美少女ゲームは家庭用ゲーム機では出せないため、パソコンで売れるゲームの多くは美少女ゲームになっていきました。 なのでパソコンゲームショップも、美少女ゲームを主力に扱うようになります。 かつては店の奥の方にあった18禁美少女ゲームが、表通りの店頭に堂々と飾られるようになり、この時点で、アキバもずいぶん変わったなと思ったものでした。 十数年前の話です。
これらのショップは販売量が多いので、独自特典などを付けるようになり、ますます客を集めます。 そうして集まった客を見込んで、フィギュアやメイド喫茶などの萌え系のショップが出店されるようになり、それがさらに客を呼び、という経緯で発展したのが、今のアキバでしょう。
だから、そもそもの発端である、表通りでの大っぴらな18禁ゲームの販売を規制すれば、アキバの萌え化は無かったと思えます。 フェイリスがパパにそうお願いして、大地主の力を発動すれば、それも可能でしょう。 そういうちょっとしたことでも、風が吹けば桶屋がもうかる式に、歴史が大きく変わるということです。 バタフライ効果というやつですね。
アキバの代わりに、中野が萌え文化の中心になっているというのが面白いですね。 『中野ブロードウェイ』は1950年代からあり、萌えに限らず、マニアックな文化の集積地だったそうです。 アキバの替わりに中野が発展していることはありえますが、でもアキバがこうなっていなかったら、萌え文化そのものが、今ほど盛り上がっていなかった気もしますな。
IBN5100が、再び焦点になっています。 無くなってしまったのは、おそらく萌郁のせいでしょうね。 彼女は過去に、携帯の機種変についてのメールを打つと言っていましたが、その内容は、誰も確認しなかったと思います。 実際には、IBN5100を、倫太郎たちよりも先に確保するように、過去の自分にメールしたのでしょう。
しかし確保できなかったようで、それは歴史改変によるバタフライ効果なのか、あるいは、さらに裏をかいた人がいるということなのでしょう。 萌郁の話しぶりからして、IBN5100の在り処を教えるメールは『FB』という人から届いたそうで、この名前は前にも登場しましたが、未来の萌郁なのでしょう。 他の人物からのも混じっているかもしれないが、いずれにしても未来からのメールです。
ってことは、『FB』の意味は『フィードバック(Feed Back)』なのかな。 そもそもは制御の用語で、そこから派生していろいろな意味に使われますが、大雑把に言えば、「試しにやってみて、その結果をもとに次の行動を決める」ということです。
制御で説明すると、例えば、手の上にホウキを逆さに立てる遊びをしたことがあるでしょう。 手をどれくらい動かせばホウキを倒さずに保てるかを計算するには、2通りの方法があります。 一つは、ホウキの重量分布など物理特性を完全に把握して、そこから運動方程式を作って計算する方法です。 どれくらいの角度であれば、手をどれだけ動かすということが、計算から求められるわけです。
もうひとつの方法は、とりあえず手を動かしてみて、それでまだ傾き続けるならさらに多く動かし、反対側に行き過ぎてしまったら、逆方向に動かすというやり方です。 これを『フィードバック』と言います。 この方法の利点は、ホウキの物理特性を厳密に知る必要が無いことで、そもそも世の中の制御対象は、ホウキほど単純ではなく、厳密にモデル化できないので、フィードバックが有効なことが多いのです。
Dメールによる影響も、厳密に計算することは不可能でしょう。 ”バタフライ効果”という言葉が出ましたが、これはカオス理論の言葉で、つまり予測困難ということです。 計算できないならば、Dメールを打って、それがもたらした結果を見てやり方を調整して、やり直すということを繰り返すしか無いでしょう。 つまりフィードバックです。 そういうことなんじゃないかなと、思ったりしました。 長々と説明したわりには、外しているかもしれませんが。
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