歴史的事実をなぞっているわけですが、解釈が興味深いですね。 へうげもの 第8話 『今宵(こよい)はイートイット』 のレビューです。
この作品の、歴史上の人物の性格描写はユニークだと思えます。 秀吉はひょうきん者というよりは腹黒いし、光秀は陰険さはなくて実直だし、家康はひたすらいい人ですね。
この時代の権力者の、性格や日常を記録した資料は乏しいようです。 当時はブログも無いですしね。 偉い人のことを論評するのは、恐れ多いという気持ちもあったのでしょう。 そういう遠慮が無い外国人の、ルイス・フロイスが書いた『日本史』が、最も貴重な資料になっているようですが、なにしろ外国人なので、ニュアンスが伝わっているかわかりません。 TPOで性格を使い分けるのもよくあることです。 現代になんとなく伝わっている、歴史上の人物の”性格”の多くは不確かなものであり、好きなように解釈してもいいのかもしれません。
家康と秀吉の性格が、ことさら対照的に描かれています。 家康は実直で、質素で、自分に厳しい。 三方ヶ原で武田に敗戦した際、自分のみっともない姿を絵図に書かせて(”しかみ像”ですね)、戒めにしたエピソードが語られました。 一方で、秀吉は毛利に水攻めという過酷な戦術を用いて、さらにそれを誇って絵に書かせます。 この二人は、必ず衝突するだろうなという伏線でした。
光秀が家康をもてなした料理は、すごいご馳走ですね。 流通も発達していない時代に、あれだけの材料を集めるだけでも大変なことだと思えます。 このときの献立は『安土献立』と呼ばれ、現在に伝わっていて、こちらのサイトに再現したものがあります。→安土献立
いわゆる「よくあるご馳走」ではありますが、むしろ日本料理のご馳走の原典が、ここにあるそうです。 これをプロデュースした光秀の手腕が素晴らしいわけですが、この宴会で、信長と光秀の間に、何らかの衝突があったという記録があります。 そこから、「信長が料理が腐っていると光秀に因縁をつけ、それが光秀謀反の原因になった」との説になり、信憑性はイマイチのようですが、広く信じられている説ではありますね。
この作品は、その解釈を採っていません。 料理が豪華すぎるということで、家康が激怒したけれど、むしろ信長はそれを取り成しています。 光秀が謀反を起こした理由は、そんな卑小なことではないという考え方です。
あの献立は、千宗易も関わっているわけですが、家康の不況を買うことを予想しつつ、あえてやったのかどうかが気になるところです。 それくらい、やりかねない気もしますが。 ”侘び”を標榜する千宗易らしくない献立ではありました。
佐介の考案した菓子は、侘びとは程遠いけれど、新しい素材を大胆に使う発想は素晴らしいでしょう。 その柔軟な頭が、出世の役にも立つといいのですが、今回は空振りだったようで。 ドンマイということで、今後に期待しています。
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光秀や家康の人物像も公正無私な高潔な人物だったり、華美を嫌い民を思いやる古武士然とした家康など斬新なものだと思いました。いまだに真相の解明されない本能寺の変ですけど秀吉や宗易の暗躍、光秀の心中などそこにいたるまでの過程は見ごたえがありました。次回はいよいよ本能寺となりそうですが続きが気になって仕方ありません。
正直、考察しづらいジャンルなのですが、今回はサブタイだけで悶絶してしまいました(笑
安土盛りはフルーツのヨーグルトサラダというところでしょうか。
「水菓子」とは本来果物のことでしたが、近年ではババロアやゼリーなどの冷菓子のことも指すようですので、佐助の考案した余りにも時代を先取りし過ぎたデザートに、食のオーパーツを見せ付けられている気分でした(笑
来週はとうとう「本能寺の変」の件のようで、奇抜と悪趣味が紙一重であることを体現したようなファッションアイコン・信長が去ってしまうのは寂しい限りですが、あのような人物が上司や社長であったならと考えてみたら、おっそろしいことこの上ないですね(汗
佐助にとっては好事家=ディレッタントとしての先達であり、理解者・パトロンに近い存在のように描かれているようですが、彼にとって大きな痛手となるのか、それとも如才なく新たな主君に仕えて立身出世を果たすのか、とても楽しみですね。
武士の人物像は新鮮で、特に光秀に共感させる作りになっていますね。これから大変なことになるわけですが、彼の心理劇が見どころでしょう。
安土盛りはいわゆる『安土献立』には見当たらないので、どの程度が創作で、どの程度事実なのかわからないですね。 あれくらいのことはやる、時代を先取りした人物だったのでしょうか。
信長がいなくなって、あの「うひゃひゃひゃ」という笑い声が聞けなくなるのは残念至極ですね。
実際のところ、ああいう上司だったら浮かばれないでしょう。 でも佐介は、信長にあくまで忠実で、心から心配もしていて、なにげに忠義の人なのでしょうね。 戦国時代の武将らしくないのかもしれない。 信長亡き後の佐介の行動が気がかりですが、まずは本能寺の変でしょう。