メルクマール

『東のエデン』でも、主人公は大金を渡されて、ゲームのプレイヤーになるのですが、そのゲームの目的は、「この国を正しき方向に導くこと」でした。　この国は正しくない、という現状認識があるわけです。

先の震災のことは置いておくとして、この国の最大の問題点は、若者が夢を持てないことでしょう。　日本は今でも、そこそこ豊かな国ですが、豊かであることよりも、夢を持てるほうが、「いい国」だと思えます。

今の日本は、先がどうなるかわからないので、若者は夢よりも安定性を求めて、公務員や大企業に職を得ようとします。　主人公も、そんな若者の一人ですね。時代を反映していて、現実的です。

僕が就職した頃は、今よりはマシで、まだ夢が持てた時代でした。　いわゆる大企業に就職したのですが、大企業のウスノロさが嫌になって、小さい会社に転職し、最初のころはすごく楽しかったですね。　でもその会社も今では大きくなってしまい、成長の限界も見えてきたので、だんだんツマらなくなってきました。

だからといって、「また小さい会社に転職しょう」とか、「いっそ起業しよう」と踏みきれないのは、妻や子がいるせいもありますが、時代の空気に侵されて、かつての元気を失ったせいもあるでしょう。だから、今の若い人や、この作品の主人公のことを批判する資格はありません。

でもこの作品は、そんな時代を打破する、元気な若者を見せてくれるのではないかと期待しています。『東のエデン』ほとストレートでは無いですが、その方向を向いているように思えるのです。

「もっと効率よくお金を稼ぎたいと思いませんか？」と誘う真坂木は、いかにも怪しいですが、 選ばれた人物のことを『アントレプレナー（起業家）』と呼んでいました。　公務員志望の主人公にとって、いちばん遠い存在です。　でも彼は、強引にアントレプレナーにされてしまったわけで、担保に取られた『未来』を守るためには、自らの才覚を最大限に発揮して、金を稼がねばなりません。それが彼の価値感にどのような影響を与えるかに、注目しています。

主人公は羽奈日のことが好きですが、羽奈日はどう思ってるのでしょうね。世話の焼き方からして、心情的には好きなのだけれど、甲斐性が無いので彼氏にはしたくない、といったところか。アニメには珍しい現実的なヒロインで、面白いんじゃないでしょうか。

まだ物語はほんの導入ですが、興味を持てる内容でした。映像もスタイリッシュで良かったかと。木曜日は激戦区ですが、これはなるべくレビューを続けたいと思っています。

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