メルクマール

『バクマン』で、サイコーが「俺と亜豆は周波数が合っている」と言うのですが、気持ちはわかるものの、周波数が合うだけではダメで、位相も合う必要があるんだよね、とレビューでツッこんだことがあります。

気持ちの波があるとして、その高いところと低いところが、一定周期で来るわけですが、その周期が同じならば「周波数が合っている」と言えます。でも、その波の時間軸での位置が、二人でズレていると、一方が高いときに、一方は低いことになってしまい、気持ちは合いません。これが「位相がズレている」状態です。

爽子と風早は、まさにこの状態だったと言えます。二人の気持ちの周波数はぴったりなんですよ。お互いに、「相手を独り占めしたい。このままでは満足できない」という気持ちと、「でもそれは強欲かもしれない。相手に迷惑かもしれない」という気持ちの波で、揺れ動いていました。

でも、位相がズレています。一方が「独り占めしたい」という気持ちが盛り上がっている時に、一方は「やっぱ迷惑かも」という弱気な状態になっていて、すれ違いが続いていたのですよね。それが、この"2ND SEASON" で繰り広げられていたことでした。

これで周波数もズレていれば、何度かやるうちに、どこかで気持ちの山が一致するタイミングがあるのですが、なまじ周波数が合っているだけに、（位相がズレていると）山はズレっぱなしで合うことが無いのです。相性が良すぎるための悲劇と言えるかもしれません。だから、「黒沼の好きと、俺の好きは違う」というセリフも出てしまう。

でも、今回の風早のセリフ、「違わないよ。同じ、でしょ」で、そのズレが一気に補正されました。二人の気持ちは、ずっと一緒だったんだと。俺の気持ちは、黒沼と全く同じだと。彼はそう言いたいのですね。　これまで何度も会って、言葉を尽くしても気持ちは届かなかったのに、この一言だけで、風早の気持ちは完全に届きました。いいセリフです。

そんなわけで、ここまで引っ張ってきた、すれ違いのラブストーリーの決着として、とても良かったと思いますね。予定調和ではあるけれど、心から「良かったね」と祝福できます。　視聴者は、まわりで見ている友人たちと、気持ちを共有しているはずです。ああ、あるべきところに収まってよかったな、と。この作品では、視聴者は主人公たちというよりは、二人を見守る友達のポジションにあるんですよね。

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