メルクマール

おおかたの予想通り、スガタは裏切ったわけですが、そうするに至るまでには葛藤があり、今回はもっぱら、それが描かれていました。葛藤の内容を理解するには、次のセリフが重要でしょう。

「人を好きになるって、何なんだろうな。抱きたいとか、支配したいとか、結局はそういうことじゃないのかな」

スガタは『支配欲』が強いのですよね。『王のシルシ』を受け継ぐ一族なのだから、それは当然です。そして彼は、自分のその性質に苦しんでいるのではないか。普段は、そういう様子を見せませんから。

ヘッドが描いたスガタの絵は、タイガーが「いやなリビドーを感じます。対象への支配欲しか感じない」と評していましたが、それはスガタの一面を表していて、そのことはスガタもよく分かっているのでしょう。

タクトもスガタも、戦う理由は、ワコを守るためでした。つまり『愛のため』ですね。タクトはそれに全く疑いを持っていなくて、ワコへの愛のために戦うことこそが、自分の「やりたいこと」であり「やるべきこと」だと考えている。 でも、スガタはそこまで単純ではないので、疑いを持っているのでしょう。結局自分は、ワコのことを「抱きたいとか、支配したいとか、結局はそういうこと」なんじゃないかと。タクトのように純粋ではなく、単なる支配欲ではないかと。

それはちょっと、考えすぎだと思えますが、スガタはその考えに取り憑かれています。そうしないと、ワコを諦めきれないからでしょう。単なる支配欲だったとすれば、ワコのことを諦めて、別に支配できる女を探せばいいことになります。そして手近に、自分を愛していて、かつ巫女であるケイトがいる。ならばケイトを愛し、支配するのが自然なことだと、自らを納得させたように見えました。

ワコとデートしたのは、ワコを諦めるためなのでしょう。ワコの本命が自分ではないことを確認するために、キスを迫り、困った様子のワコを見て、決別する決心をしたと。

自分の中に眠る『王の力』を、思う存分発揮したいという欲求も、また大きいと思えます。彼はそういうふうに生まれたのだから。そのためにも、綺羅星十字団に入る必要がありました。 ここからどうなるでしょうか。スガタは、あくまで理詰めで、そうするほうが合理的だと考えて、ワコのことを諦めたように見えます。でも彼の感情は、本当にそれでいいのでしょうか。彼の「やりたいこと」と「やるべきこと」は一致してるのだろうか。そのズレに気づくことが、必要になるのでしょう。

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