メルクマール

この物語での「天使」の扱いが、まだ分かっていないのですが、おそらくそれも魔術の一種で、人々の「祈り」が形になったものではないでしょうか。一般的な魔術は、魔術師の強力な意志の力で発動されますが、魔術師ではない普通の人でも、皆が同じ方向性で祈りを捧げれば、その総量はかなり大きくなるはずで、それが「天使」なのだと思えます。

ラストオーダーは、科学サイドで遺伝子調整によって作られたクローンで、ミサカネットワークのハブです。でも彼女の真価は、そのネットワーク処理能力をAIM拡散力場のハブにすることでした。AIM拡散力場は、学園都市の能力者の無意識の能力の発露であり、それを集めると大きな力になります。ミサカネットワークがそれを集め、ラストオーダーが処理して、人工天使を作り出す力になりました。

どちらも、多くの人のマインドパワーを集めて、天使を作り出したという、原理と現象は同じです。手段が違うだけ。これに限らず、魔術と超能力の違いとは、手段の違いでしかないのでしょう。

ラストオーダーは脳にウイルスを打ちこまれていて（生物的なものではなく、コンピュータウイルス的なものだと思いますが）、それを解除しなければ絶対に助からない、と木原は言いました。でもインデックスは、「歌」によって解除できると言います。

これは、超電磁砲でのレベルアッパーの件を思い出させます。レベルアッパーの正体は音楽ファイルで、それを聞くことで、超能力が高まる仕組みでした。その時は、この原理は「共感覚」で説明されていました。共感覚については、当時のレビューに書いていますので、ご興味があれば読んで下さい。

でも魔術サイド的に言えば、そんな用語を持ち出すまでもなく、「歌には魔力がある」でいいんですよね。どんな宗教でも、儀式で歌を歌いますが、それはみんなで歌うことで、精神が刺激され、一種の魔術効果があるからです。

そういう裏付けがあるので、インデックスが歌によってラストオーダーを助ける、という展開にも納得がいきます。これまで、このシリーズで設定を積み重ねてきた効果ですね。また、科学に対して魔術で、あるいは魔術に対して科学で対抗するという展開になり、「科学と魔術が交錯する時」が初めて実現したのでした。

アクセラレータが、最後に羽が生えて復活したのは、何なのでしょうね。彼は以前に脳を損傷して、『一方通行』の発動に必要な演算能力を失ったので、ミサカネットワークの支援に頼っていました。でも電池切れにより、ミサカネットワークに頼れなくなったことで、新たな能力を獲得したのでしょうか。ラストオーダーを守りたいという強い想いと、生来の素質があれば、それも可能だと思えます。

そんなわけで、なかなか盛り上がって終わったように見えたのですが、まだ終わりではないのですね。いよいよ、学園都市の黒幕と対峙するのでしょうか。ご無沙汰気味の、イギリス正教のメンバーが参入するのを期待しています。このままでは神裂さんの出番が無いですしね。

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