メルクマール

『ザナドゥ』の設定は、『セカンドライフ』を思わせます。セカンドライフは、インターネット上に作られた仮想世界です。プレイヤーは、自分の分身である『アバター』を作り、家を買って、生活します。特定の目的は無くて、町の人と会話したり、ゲームしたり、場合によっては結婚したりできます。その名の通り、「もうひとつの人生」を送るのですね。

セカンドライフ内で買い物をするには、リンデンドルと呼ばれる仮想通貨が必要ですが、これは現実のお金で買うこともできるし、セカンドライフ内で商売をして、他のプレイヤーからもらうこともできます。技術やセンスのある人は、アバターに着せる衣装を作ったり、かっこいいアイテムを作ったりして、それを売って稼ぐわけです。ミーガンやコリンは、まさにそうやって生計を立てているようでした。セカンドライフを意識しているのは間違いないでしょう。

ただ、セカンドライフは仮想現実（VR）なのに対して、ザナドゥ（フラクタル）は拡張現実（AR）なので、そこは違います。前者はコンピュータやネットの中だけの世界なので、自分のキャラクタであるアバターが住めるだけですが、後者は現実世界とコンピュータによる仮想現実を重ね合わているので、生身の人間も入れるわけです。より高度な技術だと言えます。

でも不思議なのは、ザナドゥには生身の人間はほとんどいなくて、もっぱらドッペル（アバター）が住んでいるようなので、拡張現実である必要はなく、コンピュータの中の仮想現実でいいんじゃ？ということですね。そのほうがずっと簡単だから。　
おそらく、そもそもはザナドゥにも人が住んでいたのだけれど、次第に引きこもってしまい、拡張現実なのにドッペルしか住まないという、いびつな場所になったのだと想像します。

『虚飾の街』というタイトルの通り、この物語の作者はザナドゥに批判的です。拡張現実なんてロクなもんじゃない、という主張ですね。ただ、一方的に悪として描いているだけなので、もう少し深みが欲しい気はします。今後描かれるのかもしれませんが。

自称アーティストが、「ネットの評論家気どりの連中」とキレるのは、制作者の自虐ネタでしょうか。商品ならば、素人に受け入れられてナンボなので、制作者が言ってはダメなセリフですよね。もちろん素人側にも、制作者へのリスペクトは必要ですが。それが分かった上でのネタなのでしょう。

ザナドゥの描写はとても面白かったし、ネッサによってザナドゥが崩壊する様子はスペクタクルでした。やはりネッサは、フラクタルのシステムに特権的にアクセスできる、スーパーバイザーモードのプログラムか何かではないでしょうか。

クレインの両親などのアバターは、単純な形でしたが、ザナドゥのアバターは人間そっくりでした。ザナドゥ以外では、フラクタルが完全には機能していないから、あんな単純なアバターしか動かせないのでしょう。ネッサは例外のようですが。

このところ、町から町へ移動するという、ロードムービーっぽい展開でしたが、いよいよ物語は核心に迫るのか。なんだかんだ言っても、映像が面白いし、キャラは可愛いし、展開にも興味が惹かれるので、楽しんでいます。

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