メルクマール

2期はずっと、風早がヘタレ気味に描かれていましたが、今回は彼なりにがんばったと思うんですよ。　「なに泣かせてんだよ！」と三浦の腕を掴んだのは、男らしくて惚れ惚れしたし、冷やかす男どもの前で「黒沼が好きだ」と言い切ったのも、やけくそ気味とは言え良かった。

そのあとの「迷惑なら、そう言えばいい」はイマイチだったけれど、
「好意だったんだよ。平等になんて、一度も接したつもりない。俺、黒沼が好きだよ」
は精一杯の告白です。残念ながら、伝わらなかったけれど、それは爽子の側の問題で、風早は責められません。

ここまで逆の意味に取られるとは、普通は思いませんから。「平等に接したつもりは無い」は、「気を使わせていた」と受け取られたし、「黒沼の好きは、俺の好きとは違うね」も、風早の真意とは真逆に取られてしまった。

風早には理解できないところですが、爽子がこういう受け取り方をするのには理由があります。爽子は小さい頃から、周囲から浮いて、無視されたりいじめられたりする立場でした。いわゆるいじめられっ子ですが、そういう環境に置かれると、その子の性格も、多少はヒネてしまうのは無理ないところです。でも、爽子は素直ないい子に育ちました。なぜでしょうか。

それは、爽子が「人の気持ちに鈍感になる」スキルを身に付けたからでしょう。自分を守るために。人に悪意を持たれていても、それは当たり前のことで、気にすることじゃないと受け流すスキルです。　それを千鶴は「そういうのって、ちょっと泣ける」と言いました。

その副作用として、人の好意にも鈍感になっています。自分は好意を向けられるような人間じゃないと思っているから、好意に気付かない。でもあやねと千鶴の一件で、自分のせいで悪く言われている二人を守るために奮起して、友達を得ることができました。そのことで爽子は変わって、友達からの好意を素直に受けられるようになったのです。千鶴がキレたのは、「そのことを思い出せ！」という発破ですね。

でも、「想い人からの好意」は、やはり数段ハードルが高くて、それについては鈍感なままです。それが風早には分かっていなかった。千鶴とあやねは気付いているけれど、爽子ならばなんとかすると信じています。　「友達からの好意」の壁を突破するために、あれだけがんばれた子なのだから。　風早はがんばった。今度は爽子ががんばる番なのです。

それにしても、千鶴とあやねがいいですよね。二人とも今回は、爽子にごく短い言葉しかかけていません。でもその言葉には重みがあり、爽子に気付かせるキッカケとして十分だったようです。次回、クライマックスでしょうか。

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