メルクマール

この作品は、ひたすら魔法少女が酷い目にあう話ですが、今回も容赦ありません。さやかはせっかく魔法少女になったのに、ヤバい同業者（魔法少女）につけ狙われています。　

また、せっかく『ひとつだけの願い』を使って上條恭介の体を直したのに、本人は退院したことを知らせもしない薄情さで、むしろ入院していた時よりも遠く感じているようです。自分がやったことは、自分にとって本当に良かったんだろうか？と疑念が生じたところを、杏子は容赦なく口に出して、さやかを激怒させます。図星だったからですね。

そして極めつけは、魔法少女の正体についてですね。キュウべえと契約した時点で、魂が体から抜き取られてしまい、身体の方はゾンビのような状態になっているらしい。魔法少女になるということは、つまり人間を辞めることだと、思い知らされたのでした。

「願いを叶える代わりに契約しろ」とは悪魔みたいだと、１話の感想で書いたのですが、実際、願いと引き換えに魂を取られちゃったわけで、もはや悪魔でしかありません。ただ、キュウべぇはあれが仕事であって、悪気は無い気もしますが。

「魔法少女」という言葉に、前からひっかかっていました。少女じゃなくなったらどうするのかなと。でも、体が魔力でなんとでも修復できるということは、少女のままで成長しないのかもしれません。ほむらも「ベテラン（老兵）」と呼ばれるだけあって、ずいぶん長い時間生きていて、ある意味不死なのかもしれない。 また、魂だけの存在なので、時空を超えることもできるのかもしれない。

ほむらが、さやかを助けたのが意外でした。てっきり、さやかを殺つもりだと思っていたので。さやかがいる限り、まどかは魔法少女になってしまう可能性が高く、ならば、もはや死んでいるも同然のさやかを切り捨てるのが、被害を最小限にする（まどかだけは救う）のに得策でしょう。個人的には、それに賛成です。

でもそう決意しつつも、いざとなったら決意が鈍ったのだとしたら、ほむらも本当は優しくて甘いのですね。ほむらが、まどかに「魔法少女には向いていない」と言うのは、自戒を込めてのことなのかも。

「マルプルギスの夜」と言ったように聞こえましたが、「ヴァルプルギスの夜」のことでしょうか。ヨーロッパ北方のお祭りで、「魔女が集まってどんちゃん騒ぎする日」という伝説に沿って、騒いで夜を過ごすのだそうです。　そもそもは、地方のマイナーなお祭りだったのを、ゲーテが『ファウスト』で取り上げてから、有名になって広まったと言われます。

ファウストを、下敷きにしていたりするのかな。となると、願いを叶えるかわりに契約をせまるメフィストがキュウべえか。でも、主人公のファウストとまどかは、全く性格も動機も違うので、ファウストのストーリーに沿うとは思えません。あるいはファウストは別に居るのかな。

この作品は、ストーリーが陰鬱で容赦無いので、見るのがなかなか辛いのです。その一方で、ストーリーに惹きこまれる部分も確かにあって、観てしまいます。ファウストは、「全てを知りたいと願うが、知るほどに不幸になる」のですが、それは実は視聴者自身なのかもしれません。

ファウストも陰鬱なストーリーで、主人公は次々と酷い目に遭いますが、意外にも、ハッピーエンドなのですよ。僕は、この作品がハッピーエンドであることを望んでいるので、それはいくらかの希望なのでした。

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