メルクマール

この物語の特徴的な設定である『ドッペル』について、「あれはどういう仕組みなんだろう」と疑問に思っている方もおられるようなので、解説しておきます。

ドッペルは、一種の『拡張現実（AR）』でしょう。拡張現実とは、現実の映像に、コンピュータによる映像（CG）を重ねて、あたかも現実世界の中にCGが存在しているように見せることです。

たとえばiPhoneの『セカイカメラ』が有名ですね。リンク先を見てもらうとわかりやすいですが、iPhoneのカメラで現実世界を写し、そこにCGによる情報を重ねています。iPhoneに内蔵されたGPSと電子コンパスによって、カメラの位置と向いている方向がわかっているので、それに応じた情報を出すことで、あたかも「CGによる情報がそこに実際にある」ように見えるのです。

これはただの情報表示ですが、CGによる女の子と合成してもよいでしょう。それが『iPhone版ラブプラス』です。これもリンク先を見てもらうと一目瞭然ですね。これの場合、GPSの情報ではなく、マーカー（紙に印刷した二次元バーコード）が必要なのですが、マーカーを置くと、それをカメラが認識して、現実の映像とCGの女の子を合成します。

『ドッペル』は、このセカイカメラと、iPhone版ラブプラスをあわせたようなものだと言えます。この物語世界の人々は、体内のナノマシンによって常にフラクタルと通信していて、視覚情報もフラクタルに支配されているのでしょう。その人がいる場所や、見ている方向もフラクタルにはわかるはずで、その情報を元に、ドッペルの映像を合成すると、あたかもドッペルがそこにいるかのように錯覚させることができます。原理的には、ただの拡張現実です。

ネッサはさらに進んでいて、見えるだけでなく、触れることができます。クレインのナノマシンを介して、触覚など神経系に干渉しているのでしょう。でもフリュネは触れないようでした。フリュネはセキュリティが高くて神経系にアクセスさせないのか、あるいは触れるクレインが特別であって、特に相性が良いからなのか、どちらでしょうか。

グラニッツ村の人々は、ナノマシンを使っていないので、直接ドッペルを見ることができなくて、バイザーが必要です。フラクタルによって描画されるドッペルを見られるということは、バイザーはフラクタルに接続しているのでしょう。ドッペルを見るには位置情報が必要であって、それをバイザーからフラクタルに送っているということは、あの村の位置が僧院に筒抜けだったのは当然に思えます。

内容についてですが、１話を見た時点では、追われている女の子を男の子が助けるという、典型的な冒険ストーリーかと思っていました。でも案外、その形にならないですね。フリュネはクレインに助けられたいとは思っていなくて、クレインはそんなフリュネに振り回されっぱなしです。ここから、クレインの成長が見られるでしょうか。

ネッサも、わがままを言ってクレインを振り回しています。違うタイプの２人の女の子に振り回される様子が、今回の見所でしょう。どちらもいいヒロインだと思えます。

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