メルクマール

キュウべぇの説明では、魔女によって、事故や自殺が引き起こされるということでした。実際、今回は集団自殺だったし、1話も飛び降り自殺でしたね。

こちらのサイト←に、日本の自殺者の統計があるのですが、長期にわたって２万人台だった自殺者数が、10年前から急に３万人を超えて、その状態が続いています。この頃に銀行が倒産したりとか、社会不安は確かにありましたが、それにしても急な増え方なので、「超自然的なことでも起ったのではないか」とか考えてしまいます。

魔法少女の元祖と思われる「ひみつのアッコちゃん」は1960年代で、高度経済成長の真っただ中でした。また、魔法少女にバトルを持ち込み、社会現象級のヒットになった「美少女戦士セーラームーン」は1990年代初頭で、バブル崩壊寸前の絶頂期でした。景気が良い時に、魔法少女ものは流行るのかもしれません。「愛」とか「夢」とかを、ストレートに語る物語ですから。

まどかマギカは、日本が長い閉塞状態にある現代に生まれたということで、意識的に時代性を反映させて、これまでの「景気のいい魔法少女もの」の真逆を目指しているように見えます。「悪役の”ダークなんとか”が子供をいじめる」といった他愛のないものではなく、「魔女が自殺を引き起こす」という設定が、”自殺時代”とも言える現代を象徴しているからです。

魔法少女たちの動機も、あまり純粋ではありません。さやかは、自分ではなく人のために願いを使ったということで、美しい愛にも見えますが、「そのことを恩に着せたい」という気持ちがあることを自覚しています。これは、かなり暗い情念だと言えます。

陰気な、閉塞した状況で、まさに今の日本のようですが、一筋の光明があるとすれば、まどかでしょう。　まどかは臆病ではあるけれど、利己心ではなく、普遍的な”愛”や”夢”を動機にしていて、つまり、60年代や90年代の魔法少女の素質を持っています。現代には場違いにも見えるほどですが、彼女はその”場違いさ”を打ち破って、この物語に救済をもたらすことができるのでしょうか。

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