メルクマール

恋愛は一種の交渉事であって、交渉では相手の持ちカードを読むことが重要です。もし相手のカードが見えていれば、勝ったも同然でしょう。第二次大戦の少し前、日本は独自の暗号機を作って、海外の大使館と通信していたのですが、その暗号はアメリカに完全に解読されていました。なので、軍縮条約の交渉などで、日本がどういうカードを持っているかをアメリカは知っていて、でも知らないふりをして交渉して、交渉はことごとくアメリカに有利に、日本には不利になりました。その時味わった屈辱感が、太平洋戦争の一因になっています。

奈緒は、情報の重要さをよく分かっていますね。自分のカードを秘匿することの重要性も、分かっている。修輔は「奈緒は自分が実の兄ではないことを知らない。だから実の妹として扱わなければならない」と思っています。でも実は奈緒は知っていて、でも知らないふりをして兄と接しています。兄が「妹萌え」であることを知っているから。　あくまで妹として接して、自分を好きにさせて、後戻りできないところまで追い詰めてから、出生について告白する作戦でしょう。

また、彩葉とのデートに自分が気づいていることは、修輔にはさりげなく伝えて、彩葉には伝えないようにしています。このあたりのセンスも素晴らしい。奈緒は情報戦に自信を持っているので、「これくらいはオーケー」と余裕の態度です。

しかし彩葉も、覗き行為によって、修輔と奈緒の生活を把握していて、でもそれを二人には知られないようにしています。これがほとんど唯一の、彼女が有利な点なので、この情報をどう使うかが彩葉にとってカギになるでしょう。

修輔は、そんな二人にただただ翻弄されています。相手が悪かったと思うべきでしょう。

今回も、テンポの良いコメディで笑えました。映画館の「それはあり得ないだろう！」とか。サブキャラたちにも味が出てきて、良作の条件が整いつつあるようです。

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