天才だってちゃんと考えているし、努力も才能の一つ。バクマン。 第15話 『デビューと焦り』 の感想です。
確かに作家には、ストーリーをあらかじめ緻密に考えるタイプと、キャラが自由に動くのに任せるタイプがいますね。当然ながら、多作なのは圧倒的に後者です。
グイン・サーガなどを書いた栗本薫さんはその典型で、よくあとがきで、「自分でもどうなるのか分からない」とか、「こうきたかと思った」とかぶっちゃけていました。だからこそ、1年間で新刊を20冊以上とか出せるわけです。1日に原稿用紙100枚書くとか。
それでも、きっちりと辻褄の合う物語を作れるのが凄い。グイン・サーガなど、第1巻での伏線を50巻目くらいで回收したりします。本能にまかせて書いているようで、頭のどこかでは緻密に考えているのでしょうね。 編集者が原稿の手直しを要求したら、その部分を消しゴムで消して(まだワープロが普及していない時代だったので)、その場できっちり同じ文字数で書き直したという逸話があり、文字数のカウントなども無意識でできるのでしょう。
新妻エイジも、明らかにそのタイプです。彼は喋るとバカみたいですが、実際は頭が良くて、あれでいろいろ計算しているんですよね。ネームがまだ出来ていないのに、とっさに「頭の中にある」と言ったり。サイコーの本質をすぐに見抜いたり。でもその計算を、無意識でやっているのが強みなのです。マンガを書くのも同様で。
シュージンたちは、そういう天才ではないので、「計算していないように見える話を、計算づくで作る」という、難しいタスクを課せられています。でも彼らは、エイジの天才を見せつけられてもヘコまず、むしろ燃えているのが凄い。自分たちの可能性を愚直に信じているわけで、夢をつかむのはこういうタイプの人でしょう。 愚直に努力できることも才能です。
美保について、これまでほとんど描写されなかったので、今回の美保サイドの話は嬉しかったですね。彼女もサイコーと同じように、夢に向かって頑張っているのですが、サイコーとはけっこう対照的かも。
というのも、サイコーは不敵な自信があって、自分はすぐにでもジャックで連載ができる。やるべきだ、と思っています。服部さんはまだ早いと言っているのに、そんなことは無いと。
一方で美保は、オーディションを勧められているにもかかわわらず、自分に自信が無くて、オーディションなんて受けていいんだろうか、と思っています。対照的ですね。
でもあの二人は、それでうまくいっています。美保はサイコーの自信に勇気付けられているし、サイコーは美保の着実な歩みを見て、自分も一歩一歩頑張ろうと思えている。いいコンビなのです。
美保の励まし方も絶妙ですね。「待っていてください」なんていう、弱気なメールを受け取ると、すかさず「バーカ」と返す。そんなのは真城君らしくないゾということで。しかし、あんなメールを出せるというのは、自分がサイコーから愛されているという絶対の自信があるわけで、そういう意味では彼女も自信家ですね。「どちらもナルシシスト」というシュージンの評は正しいのでしょう。
次回は、香耶がフィーチャーされるのでしょうか。 若者が夢を追うという物語にあって、彼女はそれこそカヤの外だったのですが(うまいこと言った)、彼女の夢は興味ありますね。仕事場にこもって煮詰まりがちなサイコーとシュージンにとって、彼女の明るいキャラは貴重です。
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