メルクマール

この作品は、どうしても『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』と比べられる宿命にあります。設定やタイトルの類似性からして、パクってるんじゃないかと思えるほどですが、Wikipediaで見ると、どちらも連載開始は2008年8月なので、どちらがパクったということもなく偶然のようです。シンクロニシティというやつでしょうか。

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』は、すごく好きな作品です。良さを一つ挙げるとすれば、「媚びてるようで、媚びてない」ところですね。確かに、妹がエロゲー好きだったりと、設定はオタク文化に媚びています。でも、兄妹間の直接的なエロ描写はほとんど無くて、実はかなり真面目に、兄妹間の情を描いていると言えます。その、媚びた設定でありながら内容が媚びていないところがいいなと思うのでした。甘いけれど、和三盆のような淡麗な味わいと言いますか。

あまりに媚び媚びな作品は、アメリカ製のクソ甘いチョコレートみたいな、後味の悪さがありがちです。この作品も、観るまではそういうたぐいではと思っていました。『俺妹』と違って、エロを前面に出しているようですし。

でも実際に観てみると、意外なほど楽しめてしまいました。コメディがいいんですよね。妹が兄を誘惑するという設定で、そのためにエロ描写がふんだんにありますが、それはシチュエーションコメディとしての道具立てであって、第一義的にはコメディだからでしょう。ネタが面白いし、表情や動きがコミカルだし、テンポが良いです。

そんなわけで、楽しみな作品がまた増えました。『俺妹』と対比するという楽しみ方もあるでしょうね。兄視点で、妹のモノローグが一切無い『俺妹』に対して、この作品は逆で、もっぱら妹視点になっています。いろんな意味で、『俺妹』の真裏な作品であり、そういうネタでも話題になることでしょう。

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