メルクマール

この作品は、第一義的にはギャグアニメ（コメディというよりギャグ）なのでしょうけれど、同じパターンの繰り返しです。「河川敷住民の非常識さにリクがツッコミを入れる」というパターンで。今回笑えたのは、牧羊犬がものすごい動きをしているシーンかな。 あれも河川敷住民ですが、初登場なので新鮮味があったと。

シスターは「表情で威嚇しろ」と言いますが、実際、牧羊犬はそうやって羊をコントロールしているんですよね。牧羊犬の歴史は古く、紀元前4000年前からと言われます。 かつての牧羊犬は、羊に噛みついたり引きずったりしていたのですが、長い年月で改良されるうちに、眼力で羊を動かせるようになりました。ボーダーコリーなどがそうです。その歴史の積み重ねは、一朝一夕では真似できません。

話が逸れましたが、なのでこの作品は、ギャグ以外のところに着目しているのですが、2期はその要素が1期より薄かったですね。1期はリクと父親のことが主要なテーマだったのですが、ああいう分かりやすいドラマはありませんでした。

でも、この作品の根底を貫くものは、確かに存在します。荒川河川敷は、何かから逃げてきた人々が集うコミュニティでしょう。皆わけありです。世間的にはホームレスですし。今回、マリアの過去について少し仄めかされましたが、過酷なものだったようで、今は「昔からは信じられないくらい幸せだ」と言いました。

ニノも、金星人ということになっていますが、何かもっと、複雑な過去があるのでしょう。金星人からテープが届いたりするのは、村長がニノの過去を知っていて、それを忘れされるための配慮なんじゃないかな。

ニノの願い事は、「みんなとずっといっしょにいること」でしたが、それは、やがて別れなければならないという予感があるからでしょう。金星行きとは関係なく。河川敷の人々は、何かから逃げるためにかりそめに流れ着いただけで、いつかここから去るのが正しいのだから。

少なくとも、リクはもう河川敷を去るべきです。彼は物語の冒頭では、「他人に借りを作るべからず」という非常識なポリシーを持っていて、エリート意識に凝り固まった、鼻持ちならない人間でした。彼も社会不適格者だったのです。でも、河川敷住人と過ごすうちに、ずいぶん角が取れて、普通の人になりましたね。「他人に借りを作るべからず」の設定なんて忘れられているし。彼はここで癒されて、普通の社会に戻る準備ができたのです。

Ｃパートで、リクはサーカスの観客でした。サーカスはきらびやかな夢の世界ですが、やがて終わりの時間が来て、日常が戻ってきます。彼も、河川敷住民との生活が終わることを予感しているけれど、今は観客として、アンコールの拍手で役者たちを引きとめて、この夢を少しでも長引かせたい、という気持ちなのでしょう。

この物語の本当のラストは、このコミュニティが解散するときだと思えます。それがハッピーエンドだから。アニメではそこまでは描かれませんでしたが、やがて来るその時の予感を、余韻として味わうのが良いのでしょう。

ポチっとして頂けると励みになります！↓