メルクマール

このエピソードが原作にあるのかは知らないのですが、無いとしたら脚本家や監督のこだわりでしょうか。ゲーム機が、新しい物から古いものまで登場して、さながらゲーム博物館のようでした。パロディ満載で、ゲーマーならニヤニヤできますね。ギャルゲーと思っていたら、いきなり凶悪な弾幕シューティングになるとか。

それにしても、これだけのゲームの映像を作るのは膨大な手間だったでしょう。スタッフの方にはお疲れ様でしたと言いたいです。

データレコーダとは、えらく懐かしいです。その昔は、ハードディスクどころか、フロッピーディスクドライブも高価だったので、パソコンのデータを保存するためにカセットテープが使われていました。データレコーダは、そのための専用のカセットデッキで、パソコンからコントロールできるようになっています。

桂馬はデータレコーダを見ながら、「昔のゲームは、もっとゆっくり楽しむものだった」と言いますが、それは本当にそうです。『ウイングマン』という、エニックスから出ていたアニメ原作もののゲームがあるのですが、これはほとんど場所を移動するたびに、カセットからの読み込みが入り、10分以上待たされるというシロモノでした…。　ロードが30秒で、「長い！クソゲー！」とか言うのは贅沢です。言うけど。

ファミコンが発売されたのは1983年で、ブームになったのはもっと後ですが、8bitパソコンはそれより前からあったので、ゲームといえばパソコンという時代がありました。テレビゲーム（当時はパソコンもテレビにつなぐことができました）のルーツに近いところまで、遡ったと言えます。

最後のシーンで、謎のキャラクタが登場しましたが、それがデータレコーダから読み込まれた、8bitパソコン風のグラフィックなのは、何かを暗示しているのでしょうか。”ゲームのご先祖様”であり、つまりは”ゲームの神様”ということなのかな。

しかし、8bit風にするのであれば、描画もそれっぽくして欲しかったな。この頃は、画像データをそのまま圧縮・展開するようなメモリーもCPU能力も無かったので、輪郭線のデータを持っていて、リアルタイムに「輪郭線を描いて塗りつぶす」ということをやっていたのです。それを再現してくれたら、まさに神でした。

今回描写したかったのは、桂馬が凄いゲーマーであるということと、桂馬の異常性でした。ゲーマーの成れの果てであり、ああなっては駄目だなと思ったし、そう思わせるためのエピソードでしょう。

ゲームに熱中している間は楽しいのだけれど、我に返って虚しくなることは、誰でもあるでしょう。こんなことをしていて、何になるのかなと。まぁ、ゲームでの体験も体験には違いなく、本や映画による体験との貴賤は無いのですが、ゲームは大量の時間を消費しがちで、リアルを疎かにしがちなので、その代償としての虚しさはつきまといます。

つまり、ゲームを愛している人ほど、ゲームを憎んでいるとも言えます。桂馬は人一倍、ゲームを愛していて、ゲームを憎んでいるんじゃないかな。彼が「落とし神モード」と称して無茶なプレイをするのは、ゲームとの戦いであり、復讐であるように見えるのです。

この作品は、「ゲームとリアル」がテーマなので、ゲームの虚しさについて避けては通れないでしょう。これはそのための伏線であり、２期につながるのでしょう。

全体として、佳作だったと思えます。いろいろな女の子のトラブルを解決する話ですが、それぞれがよく練られた、印象的なストーリーでした。でも、個人的に傑作とまでは思えないのは、キャラの弱さですかね。レギュラーキャラが２人＋母親しかいなくて、メインヒロインと言えるのはエルシィだけなので、やや荷が重かったでしょう。２期はキャラが追加されるようなので、そのあたりは期待していいのかも。楽しみにしています。

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