メルクマール

心理描写が良いと思うのですよ。言葉ではあまり説明せずに、演技で表現します。そのためには、それを狙った脚本と、きめ細かな作画と、声優さんの演技が必要ですが、高次元で実現されていると思えます。

原作小説は1人称だと思うのですが、アニメでもそのスタイルを崩していません。9話はヒロイン視点がありましたが、あれはアニメオリジナルということで例外でしょう。これにより、ヒロインが主人公のいないところで何をして、何を思っていたのか、いろいろ想像する余地があります。

Aパートの自宅での騒動と、Bパートでのパーティーとの切りわりが唐突でしたが、あの間にいろいろあったようで、それを想像させるためのセリフが散りばめられています。沙織は、京介がメガネフェチだと知っていたので、桐乃が麻奈実のことを洗いざらい話したことが分かります。

Aパートの件で、京介は何日も落ち込んでいて、それは桐乃の目にも明らかなくらいだったのでしょうね。さすがに悪いことをしたと反省し、また京介に決定的に嫌われることも避けたい彼女は、沙織と黒猫に相談したようです。それで二人が一肌脱いだと。

ただ、元気づけようという、二人の余興は不発で、京介に居心地の悪い思いをさせただけでした。実際彼は、妹のことを意識しないように、普段から努力しているので、あの方向性は逆効果だったでしょう。

彼は、自己満足として妹のために奔走しているのだから、感謝はいらないと言いますが、それは本心からです。むしろ感謝されては困ると思ってるでしょう。感謝されて、これ以上妹が好きになってしまうのはマズいと、潜在意識で思っているから。

でも、思いがけず妹から感謝されてしまい、心の底に閉じ込めていた思いがあふれて、涙になったのでしょう。彼がこれまで、妹への思いをどれだけ抑え込んでいたかが現れている、と思うのでした。

オチもいいですね。妹モノのエロゲーを、「私だと思って大事にしてね」と渡したのですが、これは、京介がメガネっ子もののエロ本ばかり持っていることへの対抗でしょう。　それで、京介ははじめて、桐乃が麻奈実に嫉妬していたことに気付いたのでした。

彼が落ち込んでいたのは、麻奈実に性癖を知られたこともあるけれど、桐乃の行為にガッカリしたからもあるでしょう。なぜあそこまでやるのか。そんなに嫌われているのかと。でもこのプレゼントで、あの行為が全部、可愛い嫉妬だったとわかって、清々しく笑うことができたのですね。これにて一件落着です。

でもこれによって、京介は自分が桐乃が好きなことを意識して、さらに桐乃も自分のことが好きなんじゃないかと、薄々気付いたのでは。次回はグッドエンドだそうですが、落しどころがどうなるか興味深いです。この作品なので、余韻のある終わり方にしてくれるでしょう。

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