メルクマール

幼い頃の、悠と奈緒の「イケナイコト」を、穹は見ていたのでした。これはショックだったでしょう。トラウマになっても不思議ではありません。

穹は病弱なので、遊び相手は悠しかいなくて、悠にべったりだったはずです。そんな悠が、「やさしいお姉さん」のふりをして近づいたアバズレ女（あくまで穹視点）に、目の前で寝取られてしまった。穹が人付き合いの苦手な、引きこもり気質になってしまったのは、その経験の影響もあるかもしれません。

さらには両親も失って、穹が頼れるのは悠しかいないのだから、ますます悠に依存してしまうのは無理もないでしょう。彼女の社会復帰のリハビリは、ゆっくり行うことが必要でした。

なのに、場所をわきまえないサカリのついたバカップルのせいで、トラウマが蘇ったわけで、穹には同情せずにはいられません。あの程度の荒れ方で済んで、まだ抑えている方でしょう。あくまで「奈緒が悪い」と考えて、悠は責めないのが健気なところです。

ええ、僕は思いっきり穹に感情移入していますね。彼女が「もう近づかないで！二度とハルの前に現れないで！」と言ったとき、僕も「そうだそうだ！もう来るな！」と思っていました。

幼い頃の件は、奈緒もずっと悩んでいて、それについて同情の余地はあります。穹に知られていたことは、彼女にとってもショックだったでしょう。

なのでしばらく身を引くのだと思っていたら、あっさり立ち直りましたね。弁当を作ったり、野菜をおすそわけしたりで穹を懐柔しようとします。なんだか、悠と奈緒の態度が上から目線というか、「穹のわがままにも困った物だけれど、いずれ分かってくれるだろう」と言いたげに見えて、ムカつくのです。

これだけ穹に感情移入できるのは、彼女が魅力的だということでしょう。最終的には、悠と奈緒がくっついて、それを穹が許すことになると思うのですが、ここからどうやって、許す心境になるのかは興味がありますね。あのバカップルどもを、許せる気持にしてくれるでしょうか。このまま、穹目線で鑑賞したいと思います。

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