メルクマール

この作品は、「オタク文化紹介」的な趣旨があるのですが、今回はアニメ化の舞台裏を見せるということで、社会見学的な面白さがありました。それなりにリアリティを持って描かれているはずですし。

男性の出席者は、右からプロデューサー、脚本家（シリーズ構成？）、監督、アニメスタジオの人、でしたね。だいたい、こういうメンツなのかな。それぞれの立場で発言していたのが興味深い。脚本家の発言力が強いですが、そういうものなのでしょうか。

桐乃の「あたしの考えた最強のアニメ化企画」が、痛々しくて笑えます。全52話って、原作が1巻しかないのに4クールやろうという図々しさはすごいものが。まぁ、そういうのも桐乃の可愛いところでしょう。あと、この長台詞をしゃべりきった声優さんはすごい。

例によって、桐乃のトラブルを京介が解決する話なのですが、今回は黒猫も重要な役割をしました。脚本家による「プロの論理」に押し切られそうになっていた雰囲気を、変えたキッカケは彼女なので。

黒猫は、桐乃が妬ましいと滔々と話しますが、それは脚本家に対して、「あなたも妬ましいのだろう」と突きつけるためでした。そして、それは的確に刺さったようです。彼が原作改変にこだわっているのは、「そうしないとアニメにならない」という理屈よりも、「小娘よりも、自分のほうがずっと面白いものを書ける」という妬みと自尊心だったのでしょう。

そうしてひるませたところで、京介の出番です。土下座して情に訴える作戦ですが、訴えるポイントが良かったですね。桐乃は大のアニメファンで、アニメ化をすごく楽しみにしているので、もしうまくいかないと、アニメそのものに幻滅してしまうだろうと。それは、ファンに喜ばれるアニメを作ってきた、あんたたちのがんばりを否定することになるんじゃないか、と。

僕も一応、モノづくりを仕事にしていますが、単に「仕事だからやる」ではがんばれないんですよね。幻想かもしれないけれど、自分が作ったもので誰かが喜んでくれる、という思いがあるから、がんばれるのです。だから、「ファンのためにがんばってくれ」という京介の訴えは、スタッフたちに届いたのだろうと思います。

そんな、硬軟合わせた二人の訴えで、桐乃のピンチは救われたのでした。なかなかいいコンビネーションです。京介の努力は桐乃には伝わらなかったけれど、黒猫には伝わって、なにやら感銘を与えたようですね。彼女もお兄ちゃんが欲しいのかな。普段毒舌なので、たまに素直だとハッとします。京介が、黒猫のために一肌脱ぐ展開はあるでしょうか。

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