メルクマール

この物語のヒロインは桐乃のはずですが、麻奈美はそのライバルとして重要なキャラなのでしょう。今回は、その麻奈美と京介の一朝一夕ではない絆を描くのが主目的で、それについて過不足無かったと思えます。

個人的には、麻奈美のようなギャップのないキャラは、あまり好みではありませんが、彼女の魅力は、京介のことが大好きというオーラを出しながらも、あくまで控えめなところでしょう。お菓子を試食するシーンで、麻奈美はテーブルの向かいに座るのではなく、斜め後ろから京介を見守っていましたね。　その昔、厳格な家庭では、奥方は亭主と同じ食卓には付かず、斜め後ろのポジションに控えて給仕していたのでした。それを思わせます。

「お風呂とご飯、どっちにする？」と、もじもじしながら言っていたのは可愛いかった。説明も無しに唐突なのは、あのセリフが言いたかったからでしょう。まぁ、いい奥さんになるのは間違いないな。

しかし、あの二人はどうにもズレているんですよね。麻奈美は、「子供の頃からそうしていたのだから、いまもそうしていいはずだ」という論理で、京介を家に泊めたり、一緒にお風呂に入ろうと（冗談でも）言ったりしますが、それは隠れ蓑で、本心は『子供の頃の関係』から抜け出したいと思っています。

一方で、京介は『子供の頃の関係』でいいと思っているし、だから麻奈美の誘いも自然に受け入れます。その自然さは、むしろ麻奈美には不満でしょう。時々、麻奈美を女の子だと意識するシーンはあるけれど、年頃の男の子だから生理現象みたいなもので、それを恋愛感情だとは意識していないのでは。

「誰かに好きだって言い寄られたら、どうする」と京介に言われた時、麻奈美は大慌てで飛び起きますが、そのとき麻奈美は「京介に好きだと言われたらどうする」という仮定だと思ったはずです。でも京介の方は、「自分以外の誰かに言われたら」という仮定でした。麻奈美もそれに気付いて、二人のズレはまだまだ大きく、先が長いことを悟ったのでした。

京介はきっと、「大人になりたくない」と思っていますね。だから麻奈美との関係も変わりたくないと思っている。なぜそうなのか、穿った見方をすれば、大人になると妹とは一緒に暮らせないわけで、それを無意識に怖れていて、それが「大人になりたくない」という考えになっているのかも。

というわけで麻奈美がメインでしたが、桐乃のシーンも大切でしょう。楽しみにしていた抱き枕が届いて、テンションが最高に上がっていたのに、そこからテンションがどんどん落ちていくのが印象的でした。最後には、京介の部屋のドアをガシガシ蹴ってるし。あれはレギオスのフェリ先輩を彷彿させて萌えました。レギオスの2期はやらないのかなぁ。

つまり今回は、「京介がいない、桐乃の一日」の描写でもあったのですね。「妹との生活感がよく出ている」と前回も書きましたが、今回も京介はいないけれど、桐乃の生活感はしっかり出ていました。トイレから、パンツのゴムを直しながら出てくるという、描写の細かさには脱帽。でも、こういう「彼氏には見せない仕草」を見せてくれるのが、妹キャラの良さでしょうから。

京介が麻奈美を家に招く約束をしたので、麻奈美と桐乃の直接対決があるのでしょう。それがすごく楽しみになってきました。

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