メルクマール

シナプスにはカプセルが多数並んでいて、そこには夢を見る少女が眠っていました。それはまるで『MATRIX』で、英四郎もそれを連想したのではないでしょうか。 映画『MATRIX』では、人々は人工知能に接続されたカプセルの中で眠っていて、主人公が現実世界と思って生活していたのは、人々の夢と人工知能が作り出した『仮想現実（MATRIX）』でした。

英四郎がショックを受けたのは、「自分たちの世界はシナプスの夢の産物、つまり仮想現実で、自分は現実に存在しないのではないか」と思ったからでしょう。でも、それはニンフが否定しました。「あんたは現実よ」と。

その言い方では、現実ではない『仮想現実』もあるのでしょう。ということは、シナプスの方が『仮想現実』なのではないかな。地上の人々が作り出した夢の世界、というわけです。でもそれが、なぜか勝手に力を持って、現実世界を支配しようとしている、というのはどうでしょう。

『シナプス』という言葉の意味は、神経細胞の接続、およびその構造のことです。『MATRIX』も、数字と数字、あるいは現象が繋がりあった構造を意味するので、似たニュアンスがあります。　『シナプス＝MATRIX』　ということではないでしょうか。

『ライブゲーム』という、地上人の夢に入り込める遊びがシナプスにはありますが、シナプスそのものが夢であれば、それが可能なのは当然ということになります。

しかし、シナプスから来たイカロスやニンフは実体であり、夢が実体を持つのは不思議ではあります。それは、シナプスが自力で身につけた力なのでしょうか。

あるいは、すべて智樹の力だという可能性は？　智樹の夢が、シナプス（仮想現実）と地上（現実）の橋渡しをしている、とか。ライブゲームでも、通常は夢の中のものは持ち帰れないのだけれと、智樹の夢で拾った”椎の実”は持ち帰れました。智樹の夢が、特別であることを意味しています。

と、今回の考察はこれくらいにしておきます。エンディング曲についても書かないと。

フォルティシモ、名曲ですね。この作品のエンディング曲は、1970年代～1980年代前半の曲のカバーが多いですが、1985年ということで、それにぎりぎり当てはまります。

この曲について語るには、まずこの時代の「バイクブーム」について語る必要があるでしょう。いまではスクーター以外のバイクは、若い人には全く人気がありませんが、80年代は大ブームでした。男の子の憧れのアイテムナンバーワンだったと思えます。僕も、まだバイクに乗れない年頃から、雑誌やカタログを眺めてうっとりしていましたね。今より遥かに多い車種が出ていましたし。

で、バイクで何をするかといえば、ツーリングでしょう。バイクに荷物をくくりつけて、風の向くままに旅をするのです。上級者は野宿しながら、日本中をバイクで走り回っていて、そんな旅行記が雑誌に掲載され、憧れたものでした。　そうして旅をしていると、バイクとは単なる機械相手ではない、特別な絆が生まれると言われます。クルマなどよりはずっと、アナログな機械ですしね。

『パリ・ダカール・ラリー（パリダカ）』は、そんなバイク好きの究極の憧れだと言えます。パリを出発点に、地中海を渡り、サハラ砂漠を付き切り、大西洋沿岸のダカールまで、何週間もレースをするのです。脱落者のほうが多く、（当時は）死者も毎回のように出るという、まさに冒険でした。

で、やっと曲の話になりますが、この『フォルティシモ』はパリダカのテーマ曲であり、またパリダカをモチーフにしたカップヌードルのCMでも使われて、有名になりました。この曲を聴くと、当時のバイクブームのことや、パリダカへの憧れのことを思い出して、胸が熱くなります。

連日砂漠に寝泊りして、砂丘を延々と走り続け、その果てに、ダカールの青い海を目にしたとき、打ち震えるほど感動するそうです。それが忘れられずに、ラリーストはまたパリダカに来てしまうと。　今回のエンディングも、智樹とバイク（？）の熱い想いがよく表現されていました。。

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