二人のすれ違いの物語のゆくえ。会長はメイド様! 第26話(最終回) 『ずるすぎるよ鮎沢、碓氷のアホ!』 の感想です。
恋愛ストーリーには、たいてい「すれ違い」の要素が必要です。すれ違うのは気持ちだったり、物理的な距離だったり、社会的な立場だったりするわけですが、そのすれ違いの様子で盛り上げ、ラストに収束させるのが恋愛モノの作り方でしょう。
この作品では、ヒロインと相手役は最初から最後までラブラブで、三角関係もなく、社会的制約もありません。なので、すれ違いの要素は無さそうなのですが、二人のタイミングのズレが「すれ違い」を作っていました。
恋愛は、自分から積極的に出る”押す”局面と、相手と距離を置く”引く”局面がありますが、二人はそのタイミングが逆なんですよね。美咲は、デフォルトは碓氷に対して怒っているので”引く”態度なのですが、最後には碓氷の優しさやカッコ良さに負けて、碓氷を受け入れてしまいます。心境としては”押す”状態でしょう。
一方で碓氷は、美咲に興味があることを隠そうとせず、基本は”押す”態勢ですが、それで盛り上がると、スッと引いてしまうんですよね。からかったことにしてしまう。ここでさらに押せば、美咲は落ちると思うのですが、そうしないのは、彼にもなにか事情があるのかもしれません。基本的に恋愛に臆病なのかもしれない。
そうやって、押すと引くのタイミングのズレによって、すれ違い続けたのが、この2クールでした。では最終回はどうだったでしょうか。
ロミオとジュリエットのコスプレをするのが、なにやら意味深です。すれ違いラブストーリーの代表作ですからね。二人は、それぞれの実家が反目しているという社会的事情ですれ違い、最後にはお互いの段取りミスですれ違って終わります。有名な墓の前でのシーンは、”ザ・すれ違い”と言ってもいいでしょう。美咲と碓氷も、このまますれ違って終わるのか。
途中までは、いつもと同じに見えました。美咲が碓氷に対してデレデレになり、心理的に”押して”いる状態だったのですが、やはり碓氷は「ごめん、いじめ過ぎた」と言って、スッと引いてしまいます。いつもなら、ここで美咲が怒って終わりです。
でも今回は、さらに美咲は押してきましたね。去ろうとした碓氷の手を取り、「ずっと手をつないでいたかったんだよ」と心情をぶちまけました。美咲が”押して引く”のリズムを変えたことで、美咲の”押す”と碓氷の”押す”が初めて一致して、二人の気持ちが一つになったのでしょう。ここまでさんざん焦らされてきたので、「やっとか!」というカタルシスがありました。
なので、とても良い最終回だったと思えます。こんなにきっちりやってくれるとは思いませんでしたね。メイド服姿が無かったのは残念でしたが、美咲のデレデレシーンを何度も見ることができました。いつもより表情豊かなのは、碓氷の影響ということなのでしょう。美咲がさらにデレデレになるところを見てみたい気もするけれど、ツンツンした美咲とのギャップが良いわけなので、このあたりで終わるのはちょうど良いかもしれません。
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