メルクマール

最近、ニコニコ動画で公式配信されるアニメが増えましたが、それを見るときは、僕は必ずコメントは消しますね。コメントによって自分の印象が左右されるのが嫌だからです。「これはない」とかネガティブなコメントがついていると、それに引きずられたりするから。

そもそも、完成された作品にはコメントはいらないのです。ニコニコ動画の真髄は、いかにも未完成な、それ自体は面白くない動画が、コメントによって面白くなることでしょう。淡々とした映像なのに、コメントのツッコミでノリが出たり、オチがついたり。　
何が言いたいかというと、この作品におけるナレーションも、それに通じるものがあると思えます。

そもそも中多紗江編は、物語として成立しているのでしょうか？　他のヒロインの物語では、純一がヒロインに振り回され、当初はヘタレ気味だけれど、所々で逆襲して、最後はきっちり告白する、というドラマがありました。

一方で中多紗江編は、ヒロインは最初から素直で、すぐにラブラブになり、すんなりと告白して終わります。表面上は、何のドラマもありません。そのままでは、物語として締まらないものになるでしょう。。

それを救っているのが、ナレーションです。純一はおおむね上手くやっていますが、初々しい二人だから、ちょっとした失敗はありますよね。それは二人にとっては何気ないことなのだけれど、ナレーションが視聴者視点でツッコミを入れることで、抑揚が出ているます。

また、表面上は順調に見えるけれど、純一の内面では葛藤がありました。以前に手ひどく振られたというトラウマです。特に、クリスマスはそのトラウマが蘇るわけで、乗り越えるには勇気が必要でした。そんな様子を、ユーモアを交えながらナレーションで語ることで、ドラマが作られていました。

そんなわけで、中多紗江編では「ドラマを作る」ということは、主人公とヒロインは放棄して、ナレーションに押しつけています。そのぶん、純粋に紗江の可愛さと、つきあい始めの初々しさを描くことが出来たわけで、成功だと思えますね。終始、楽しんで見ることができました。これは構成の勝利しょう。

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