七花は、茫漠とした掴み所のない人物で、こんなキャラが主人公でいいんだろうか、と正直思っていました。でもそれには理由があったんですね。 刀語 第8話 『微刀・釵』 の感想です。
七花は、「一振りの刀であれ」と父親に教育されてきたのです。人間ではなく、刀になりきれと。余計なことは考えず、使う人の為に働けばよいと。その教育の甲斐あって、ああいう茫漠としたキャラが出来上がったわけです。
でも、とがめと旅をするうちに、彼は少しづつ”人間味”を見せるようになってきました。そして今回、急にそれが花開いたというか、すごく人間らしくなっています。表情が豊かになったし、とがめをからかって笑うシーンが3回もありました。以前からは考えられません。
大きなキッカケは、前回の七実との戦いに違いありません。七実がとがめを傷つけた(髪を切り落とした)ことで、七花は逆上し、「一本の刀」としてではなく、自分の意思で戦いました。とがめを守りたいから戦ったのです。 そのことで、七花は「刀」から「人間」へと脱皮しました。
そして今回、意思のない”戦うための人形”を相手にしたことで、七花はそれにかつての自分を重ねて、自分はアレとは違う、とはっきり意識します。「命令されたからではなく、自分の意思で、とがめを守る」と宣言しました。
この流れは、素晴らしいと思いますね。茫漠とした人間味のない主人公が、人間性を取り戻す過程をしっかりと描写した、緻密な構成と言えるでしょう。
とがめは、こうして七花が「刀」から「人間」になったことを、どう思っているでしょうか。前半部分では、七花が人懐っこくなったことを、あまり喜んでいない雰囲気もあります。彼女は、これまでは「刀」として自分に従っていた七花が、人間性を取り戻すことで、自分から離れるのではないか、という不安があるのでは。 だから、七花が否定姫の話を出したときにも過敏に反応していました。
そもそも、彼女の立場としては、あくまで自分が主人で、七花がそれに従う刀、という関係であるべきです。道具に思い入れを作るべきではない。でも「刀に対する感情移入なら、私が言っていいことではないか」と自嘲していたように、もう手遅れなのですね。
ちなみにこのセリフは、七花への愛の言葉とも取れますが、七花は無反応でした。彼には難しい比喩だったのでしょう。 一方で、七花が戦闘中に「とがめを守る」と言ったのは、彼としては、これまでとは違う、新たな決意での言葉だったのだけれど、とがめには「何をいまさら」と言われていました。 二人のズレっぷりは相変わらずで、これがうまく合うようにならないと、ラブストーリーとしては盛り上がらないのでしょう。それは今後の課題ということで。
それにしても、『釵』はオーバーテクノロジーでしたね。太陽光をエネルギーにしているようですが、太陽電池があるとは思えないので、太陽熱による温度差を利用しているでしょうか。エアコン(ヒートポンプ)は電気エネルギーによって熱を移動させますが、逆に動かせば熱によってエネルギーを得ることができます。”水飲み鳥”はそのシンプルなシステムですね。
決戦の日は空が曇っていましたが、これは曇りの日をとがめが選んだのだと思えます。そのための準備期間だったのでしょう。
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