メルクマール

純一君も、いいところを見せる気満々です。どう対応するべきか、ギャルゲーの選択肢風に言えばこうなります。

1. お母さんにも、自分の幸せを求める権利があるんだし、とたしなめる
2. とにかく話を聞いてあげて、「思い詰めるなよ」と励ます

１を選んじゃだめです。バッドエンドですね。正吉ルートまっしぐら。 そんなことは、理屈では分かっているんですよ。でも感情が整理できない、というのが今の薫の状態なので、ドヤ顔で「お母さんのことも考えてあげなよ」とか忠告するのは、意固地にさせるだけです。

感情の問題なので、感情を鎮めることが第一です。悩みを聞いてあげることは、それだけでガス抜きになるんですよね。一人で悶々としているよりはずっといい。そうするうちに、気持ちが落ち着いて解決に向かうことが多いでしょう。この場は話を聞いてあげて、共感してあげて、でも「あまり思いつめない方がいいんじゃ」とアドバイスするのが一番無難です。

しかし純一は、第三の選択肢を選びました。

3. 薫が言葉にできなかった本心を言い当てる

薫は母親に怒っているように見えて、自分を責めているのです。自分に何かが足りないから、母親に再婚を決意させたのではないかと。父親と三人で暮らした思い出を、二人で守っていこうと誓って、これまで生きてきたわけです。すごく大変だったと思いますが、「お母さんは私が守る」という意気が、頑張りの元だったはず。でもそれが否定されたように思えて、自信を失い、母親や父親にも申し訳ない気持ちでいるのでしょう。

純一はそれを見抜いて、「自分を追い詰めちゃいけない。自分のことより、母親や父親のことを大事にしているから辛いわけで、自分のために泣いていいんだ」というような意味のことを、簡潔に言いました。母親のために気を張って生きるのは、そろそろ休んでもいいんじゃないか、という示唆を含んでいます。

第三の選択肢はリスクも大きく、外したときは悲惨ですが、純一の言葉は薫の心に届きました。「母親のために」というがんばりが、母親を悲しませては本末転倒なわけで、意地になっていたことを認めたのでしょう。純一が見守ってくれることも力になり、母親と和解することにしました。純一も大いに男を上げたようで、ハイリスク・ハイリターンの賭けに成功したと言えます。

それで、純一が調子に乗っているのが気になりますけどね。「今の僕、けっこうカッコイー」と。　でもこのトラブルを契機に、純一も薫を意識するようになりました。いつも強気な女の子の弱みを見せられて、ギャップでクラっとなるというのはわかります。

この作品のパターンがだいたい分かったような。1章は導入、2章はサービスイベント、3章でちょっとしたトラブルがあり、4章で結ばれる、という。このパターンなら、次回はベタベタ甘い展開になるのでしょう。

今回は、トラブルの内容としてはありきたりですが、その解決を通して二人が接近する様子がうまく描かれていたと思えます。

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