メルクマール

この作品は、ソンビが蔓延する絶望的な状況での、本能と理性のせめぎ合いを描いています。　警官は法の執行者で、武装しているので、常に理性的でいなければなりません。拳銃の仕様には細かい規定があり、基本的には緊急避難（自己や他人の生命に危険があるとき）でしか人に向けて発砲できません。発砲する前には警告する義務があります。

でも今回は、警官でさえ理性を失い、本能のままに行動しはじめる様が描かれていました。ましてや市民が、理性を保てるはずがありません。生き残っている人々の間での地獄絵図が始まっています。

それに対して、小室たちのマンションのパラダイスっぷりは、あまりの落差にめまいがするほどでした。この対比はすごすぎる。でもあのはしゃぎっぷりは、恐怖と不安の裏返しでもあり、狂気が含まれているようにも思えます。みんなヘンだし。良識派に見えた毒島さえ…

本能と理性のせめぎあい、の話でした。麗は、かなり本能で生きている人間でしょう。感情的で、思ったことをそもまま口に出す。それでまた、小室を怒らせてしましました。小室は理性的な、冷めているとも言える人間ですが、永の話は逆鱗です。抜きがたいコンプレックスがあり、殺してしまった罪悪感もあるので。

麗は小室を怒らせたことで、不安になったのでしょう。この状況で、小室に見捨てられるのは心細いわけで。彼女は本能のままに、小室を誘惑し、ぬくもりを得ようとします。

いわゆる”吊り橋効果”は、恐怖を恋愛感情と勘違いすることです。恐怖と恋愛（エロス）は、どちらも脳の古い部分（爬虫類の脳）がつかさどっていて、似た感情だと言えるのです。　
外にはゾンビ、内には本能全開のエロい女、という状況が、”本能と理性のせめぎ合い”を２重に作り出し、増幅します。　やはり、麗はこの作品のヒロインにふさわしい、と思うのでした。

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