メルクマール

「じっとしてなきゃいけないなんて、なんて難しい役！」と唯は言ってまいたが、これは『ガラスの仮面』で北島マヤが人形の役をしたことを思わせます。「舞台でじっとしてるだけなんて、誰でもできるだろう」と揶揄されつつ、観客が人形だと思いこむくらいの演技をするのは、実はすごく難しかったという話。唯は天才肌で、熱心でもあるので、「人間がやってたなんて全く気付かなかった！」と言われるほどの完ぺきな木を演じて、「平沢唯、恐ろしい子…」と言われるのかもしれませぬ。

澪がロミオとで、律がジュリエットというのは、普通考えて逆ですよね。　『ガラスの仮面』でも、「ふたりの王女」という演目で、北島マヤと、ライバルであるところの姫川亜弓が共演することになります。その名のとおり「ふたりの王女」がヒロインで、一方の王女は、何不自由なく育てられ、愛に満ちた「光の王女」、もう一方は、不遇な生い立ちで、心に暗いものを秘めた「闇の王女」。　誰もが、生まれながらのサラブレッドである姫川亜弓が光の王女にふさわしく、泥臭く這い上がった北島マヤが闇の王女だろうと考えたのですが、月影先生は、あえて逆にキャスティングします。

普段とは違う役をさせることで、新たな魅力を引き出そうという作戦でしょう。クラスメイトがそう考えたかは分かりませんが、スタッフ（原作者？）の狙いはそこにあるはず。澪と律は、どんな魅力を見せてくれるでしょうか。

北島マヤと姫川亜弓は、役に成りきるための”特訓”として、お互いの生活環境を交換します。澪と律も、相手の気持ちになりきる、という特訓には、それなりに成果がありました。　でも、ウエイトレスの特訓の効果は微妙らしい。

澪が恥ずかしがりやなのは、単に性格の問題というよりは、『あがり症』なのだと思えます。緊張して失神するというのは、普通ではないですから。あがり症は軽度とはいえ神経症なので、一朝一夕には直りません。

僕は小学生のころ、『吃音症』（どもり）だったことがあります。喋りたい言葉はちゃんと準備できているのに、なぜか言葉が引っかかって出てこないという。それで焦るとさらに酷くなって、どうしようもないのでした。

吃音症の原因は完全にはわかっていないようですが、性格の問題というよりは、脳の回路の問題だと思われます。『あがり症』もたぶんそれに近くて、落ち着かなきゃと分かっていても、どうしようもならないのでは。あがり症の人は、人より感受性が強くて、ノルアドレナリンが出やすいとも言われます。

なので、根本治療は短期的には無理だとして、学園祭をのりきる方法を考える必要があります。　ライブでは普通にできているので、演奏に集中して、観客を意識しない状態ならば大丈夫なのでしょう。それが演劇でも出来るか、がポイントになりそうです。

今回は、普段は律に突っ込むべき澪が弱っていたので、もっぱら梓が突っ込んだり、からかったりしていて、珍しいパターンでした。梓と4人組との距離は、着実に縮まっているということなのでしょう。とはいえ、学園祭の練習に熱心な4人組からは取り残されて、ちょっとさびしそうにも見えます。肝心の学園祭ライブはどうなっちゃうのか。

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