メルクマール

他のヒロインは、比較的、見た目通りのキャラだと思うんですよ。カリーナといい、ミネットといい、あまり裏がありそうにはない。

アニエスには、サーカスのピエロのような趣があります。ピエロは、ハイテンションでおどけて、人々を笑わせるけれど、よく見ると泣いているような、物悲しい顔をしています。なぜかといえば、ピエロの起源はイタリアの古典喜劇（コンメディア・デッラルテ）にあり、尻軽女に惚れて振られるという、悲恋の物語の主人公だから。観客を笑わせながらも、失恋の悲しみを表現するという、二面性のある役だったんですね。

余談ですが、僕はピエロと言えば、合唱曲の”月光とピエロ”を思い浮かべます。男声合唱曲の定番中で、美しくも悲しい、とてもいい曲です。そもそもは、野田昌宏さんのSFで印象的に使われていて知ったのですが。

閑話休題、 アニエスも、ハイテンションで明るいのだけれど、ふとした時に真面目な、どこか悲しそうな表情を浮かべます。彼女の心には拭えない悲しみがあって、それを隠すために明るく振舞っているのでは、という気がするのです。

洞窟に閉じ込められたとき、アニエスは冷静に振舞っていて、これも意外性がありましたが、でも内心では怯えていて、レスターに気づかれました。以前にも閉じ込められたことがあるそうなので、そのときのトラウマでしょうね。これは、彼女の過去につながる伏線なのでしょう。

アニエスとレスターにフラグが立ったように見えますが、アニエスはカリーナとレスターの仲をいつも冷やかしているし、恩人であるカリーナを押しのけようとは思わないでしょう。彼女の悲しみの種が、また一つ増えたのかもしれません。

そういう複雑なところのあるアニエスというキャラを、アニメーションはうまく描いていたし、水橋かおりさんの演技も素晴らしかった。今回、ストーリー的にはそれほどフックが無かったけれど、アニエスの”演技”を見れただけで良かったなと思いました。

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